2011-01-01から1年間の記事一覧

今年最も印象に残った10枚

今年買った盤の感想がまだ終わっていないが、とりあえず締めくくりとして今年の10枚を。今年も順位は付けずにブログ掲載順に並べている。 Simone Dinnersteinの'Bach: A Strange Beauty' Alexander MelnikovのBrahmsピアノソナタ第1,2番ほか Dejan LazicのBe…

Abdel Rahman El BachのJ.S.Bach平均律第1巻

国内盤は高くてちょっと手を出す気にならないところへ、海外ショップで安く手に入るようになり購入。El Bachらしい明晰なアーティキュレーションによるキビキビとした演奏を期待していたのだが、全体的にタッチがちょっと重い。その上音色の変化が乏しく(こ…

Stephen HoughのLiszt & Griegピアノ協奏曲

今回の協奏曲はライヴではなくセッション録音。これまでの彼の協奏曲に秀演が多いのは実はライヴであることも関係しているのではないかと思っているので今回のはどうかとちょっと心配していたが、結果的にはそれがほぼ当たってLisztの1番とGriegはいまひとつ…

Shai WosnerのSchubertピアノソナタ第15&17番ほか

昨日のLewis盤と曲がかぶっているが、聴いたのは実はこちらの方が先。レリークは一音一音を慈しむようなじっくりとした足取りで、こういうのも悪くない、というかこちらの方が解釈としては普通か。録音のせいかLewis盤に比べると微妙に音が硬い感じがする。

Paul LewisのSchubertピアノソナタ第15,17,18番ほか

Lewisの久々のSchubertソロ録音。思えばデビュー盤の14&19番を聴いて以来彼には注目してきたわけだが、今回の新譜を聴いて、やはり今Schubertを弾かせたら最も信頼できる弾き手であると再認識した。大好きなレリーク第1楽章は思いのほか速めのテンポだったが…

Henri SigfridssonのSibelius交響曲第2,5番(ピアノ独奏版)

Sibeliusの交響曲は実は(サワリの部分を除いて)これまで聴いたことがなかったが、今までも春の祭典とかシェエラザードとか、ピアノ編曲版から入ってその曲の良さを知る、ということが多々あるので買ってみた。結論から言うと演奏が今ひとつパッとしないこと…

Andrew von OeyenのLisztアルバム

全体的にカチッとした楷書的な演奏。ロ短調ソナタでは見せ場でもあまり思い切った加速を見せずインテンポをキープするような傾向があるので、良く言えば機械のように精確な、悪く言えばちょっと柔軟さに欠けるような印象を受ける。他の曲はそうでもないけれ…

Evgeny Starodubtsevの20世紀ピアノソナタ集

収録されているのはProkofievの5番、Ginasteraの1番、Szymanowskiの3番、そしてBartok。テク的には特に強さを感じないが、解釈はよく考えられており、1音1音をゆるがせにしない姿勢が感じられるところは好感が持てた。どちらかというと知性派タイプか、と思…

Lang LangのLisztアルバム

Lang Langというと私の中ではもうイロモノ的ピアニストと認識されているのだけど、これを聴くと至極まともというか、技術もしっかりしていて打鍵もクリーン。逆にそれが(自分を含めて)爆演を期待している向きには物足りなく感じてしまう。

Nikolai LuganskyのLisztアルバム

全体的に良質な演奏であり、特にあげつらうような欠点もないのだけれど、昔の彼のCDを思うと、凄みのようなものが感じられず、彼もフツーのピアニストになってしまったのだなと思う。まあ自身でも自分はLiszt向きではないと言っていた気もするけど。

Joseph MoogのLisztアルバム

長いこと更新をサボっていたが、今年も残り少なくなったということで、溜まっている感想を一気に吐き出すことに。(それでも今年中に全部終わりそうにないけど…。)時間もあまりないのでいつもよりさらにシンプルに。 Moogは以前のCDでなかなかのテクを見せ…

Laure Favre-KahnのChopinワルツ集

Chopinのワルツ集を買うことは普段ほとんどないけれど、久々にCDショップに行ったらたまたま試聴コーナーにあったので購入。(新譜ではない。)試聴時にも感じたが、彼女とはやっぱりとことん波長が合うみたい。特に際立った特徴があるわけではないが、アゴ…

Herreweghe/Collegium Vocale GentのJ.S.Bachモテット集

最近はOVPP演奏以外はあまり食指が動かないのだが、この曲は彼の旧盤('85年)で一時期お世話になっていたのでその懐かしさもあって新録も買ってみた。印象として、旧盤とスタイルに大きな違いはないけれど、全体的により躍動的で、声も生々しいというか表情豊…

Franz Liszt Piano DuoのLisztファウスト交響曲(2台ピアノ版)

心待ちにしていた2台ピアノ版ファウスト交響曲が、やっとNaxosのLiszt全集からリリース。ただ弾いているFranz Liszt Piano Duoは以前の盤でやや華のない演奏をしていたので嫌な予感があったが、残念ながらそれが的中。この曲の演奏で気に入っているHitzlberg…

Paul LewisのBeethovenディアベリ変奏曲

P. Lewisつながりでこちらも一応感想を。ディアベリは昔からの苦手曲で、正直これまでこの曲を聴いて面白いと思ったのはMustonen盤くらい(彼の超個性的演奏の成せる技)。Lewisならこの壁を破ってくれるかも、と思って買ってみたのだが、確かに冒頭主題を聴…

Martin RoscoeのBeethovenピアノソナタ第4,19,20,21番

マイナーなCDと言えば、これの感想を書くのを忘れていた。Roscoeは1952年生まれの英国のピアニストで、結構な数のCDを出すなど彼の地では結構有名なようだが、今回初めて聴いた。当然目当ては4番ソナタ。全体的には良心的な演奏で、特にWaltsteinの第1楽章な…

Ben SchoemanのLisztアルバム

Lisztアルバム3連発の最後はSchoemanという南アフリカのピアニスト。結論から言うとこちらもイマイチ。ダンテもロ短調も緩徐部分で異様に遅いテンポを取るが、その遅さに見合うような音楽的充実が感じられず(要するにタルイ)、かと言って急速部分も技巧的…

Nino GvetadzeのLisztアルバム

Gvetadzeはグルジア出身のピアニストで、2008年のリストコンクール(ユトレヒト)で第2位&聴衆賞だったらしい。冒頭のハンガリー狂詩曲第10番を聴くと確かに技術や音楽性に筋の良さが感じられ、またピアノの音も美しい。献呈や糸を紡ぐGretchenなど歌曲物でも…

Tristan PfaffのLisztアルバム

Pfaffは1985年生まれのフランスのピアニスト。最初がHorowitz編のラコッツィ行進曲なので、腕に覚えあり、といったタイプかと思ったら、どうも流れが硬くでイマイチ乗り切れていない。歌心のなさも気になるところで、特にアゴーギクにセンスが感じられず、ヴ…

Benjamin Grosvenorの’This & That’

Deccaデビュー盤が好印象だったので、本当のデビュー盤の方も買ってみた。こちらは16歳のときの録音。今回の収録曲は必ずしも馴染みの深いものばかりではないが、それでもやはり非常に洗練された、16歳にしては、などという但し書きが全く不要な完成度の高い…

Benjamin GrosvenorのChopin, Liszt & Ravel

イギリスで神童と謳われたGrosvenorのDeccaデビュー盤。彼を聴くのは初めてだが、なるほど確かに豊かな才能を感じさせ、その意味では神童がspoilされずに順調に成長したようで目出度い。指回りが優れていることは当然として、打鍵に全く力みがなく、タッチが…

YUJI TAKAHASHI PLAYS BACH

CD化してほしいレコードにも挙げていた高橋悠治の最初のBachアルバムがついにCD化。思えばこの盤で高橋悠治が気に入って、その後DENONへの一連の録音を買い揃えていったことが懐かしく思い出される。多少鍵盤をぶっ叩くようなところはあるけど、クッキリとし…

Peter Kooij/Sette VociのJ.S.Bachモテット集

OVPPによるBachは気がついたらなるべくチェックするようにしているけど(受難曲を除く)、これは気がつくのが遅かった上に入荷待ちでだいぶ待たされて最近やっと聴けたもの。が、待ってた甲斐があったとも言うべき、期待を大きく上回る演奏。一人一人の声のつ…

Maurizio BagliniのJ.S.Bach/Busoni編曲集Vol.2

第1集が好印象だったBusoni編曲集の続編。今回は私の好きなBWV532が含まれていたが、残念ながらこれはもうひとつ。いつものように音色やタッチが多彩なのはよいが、フーガ後半のアゴーギクはさすがにちょっと大仰すぎるし、またフレーズ中でテンポが走ったり…

Marc-Andre HamelinのLisztアルバム

久しぶりのHamelinのLiszt。B-A-C-H幻想曲やタランテラはよいとして、ロ短調ソナタは(通常の基準で言えば十分に優秀な演奏なんだろうけど)彼にもっと多くを望む人にとってはちょっと物足りないのではないか。というか直前にBuniatishvili盤を聴いた後だと…

Khatia BuniatishviliのLisztアルバム

グルジア出身の若手ピアニスト、Buniatishviliのデビュー盤。Argerichからも賞賛されているとのことがだ、確かにこの盤を聴く限り、かなりの逸材、というか軽い衝撃を覚えた。ロ短調ソナタの急速なパッセージでの指回りは目を瞠るものがあるし、メフィストワ…

Glenn GouldのJ.S.Bachブランデンブルク協奏曲第5番ほか

先日の記事で触れていた愛聴盤の紹介で、P.Adler指揮Baltimore室内管弦楽団との共演による'62年のライヴ録音。他の2種のBrandenburgに比べるとテンポがゆったりしていてどことなくマッタリ感が漂うが、彼のハンマークラヴィーアソナタやLiszt編の田園交響曲…

Glenn Gould In Concert 1951-1960(その2)

昨日の続き。 今回、Goldberg変奏曲も'58年のライヴが新たにリリースされ、これが(多分)彼の5つ目の録音になる。時期的に'55年のスタジオ録音と'59年のSalzburgライヴの間に位置するためか解釈もその中間のような感じ。変奏間のポーズがほとんどなく、また一…

Glenn Gould In Concert 1951-1960

Gouldの未リリースのライヴ録音を中心にまとめた6枚組で、19曲中13曲が初出という大盤振る舞い。これがもしSony Classicalだったらチビチビと出し惜しみするところだろうから、Sonyに権利が渡ってなくて本当に良かった。 今回特に興味があったのがBrandenbur…

Francesco Tristano Schlimeの’Frescobaldi Dialogues’

これはだいぶ昔(2007年)に注文してそのときは在庫切れか何かで、最近になってやっと入荷したもの。タイトルに'dialogues'とあるのは、Frescobaldiのオリジナル曲の合間にSchlimeによるインプロヴィゼーションが含まれているため。(ちなみにSchlimeは最近DG…