今年最も印象に残った10枚

  1. Alexander MelnikovのShostakovichピアノ協奏曲第1&2番ほか
  2. Yuja Wangの'Fantasia'
  3. Banchini & BoetticherのJ.S.Bachヴァイオリンソナタ全集
  4. Hardy RittnerのChopinエチュード全集
  5. Paul LewisのSchubertピアノ作品集
  6. Stephen Houghの'French Album'
  7. Ashley WassのBeethoven/Liszt交響曲第6番
  8. Murray PerahiaのBeethovenピアノソナタ第4 & 11番
  9. Khatia BuniatishviliのChopinアルバム
  10. Alexej GorlatchのBeethovenピアノ協奏曲第3番ほか

今年もいつも通り、新譜に限らず今年購入したCDの中から順位はつけずにブログ掲載順に並べている。今年は去年の反動からかちょっと不作で、正直10枚ではなく5枚にしようか迷ったが継続性も考えてやっぱり10枚とした。
それではみなさんよいお年を!

Amir TebenikhinのProkofievピアノソナタ第4,7,8番ほか

Tebenikhinは第4回浜コンでお気に入りだったピアニストで、今回の収録曲も4番、8番、トッカータは別録音で聴いたことがあるが、応援の意味も込めてこの新録も購入。結果としては、このCDで彼の魅力は伝えるのはちょっと難しいかもしれない。4番は、以前のライヴ盤に比べると1,2楽章はともかく終楽章はちょっと覇気に欠けるし、7番もかなり遅めのテンポを取って割りには、それに見合った面白さがあるかと言われると、う〜んという感じ。最後のトッカータはライヴ盤に比べると瑕もなくなかなかの佳演だったが。

Amarcord & Lautten CompagneyのJ.S.Bachモテット集

OVPPによるモテット集がまた一つリリース。このグループは初めて聴くが、全体的にリズミカルで一人一人の声にも存在感があり、(King's Singersを思わせるような)ポップな印象を受けた。こういうBachも当然よいと思うが、ただ残念なのはときどき合唱の部分を器楽合奏のみで弾いているところ。ライナーによると彼らの趣向のようだが、合唱の見せ場のようなところで声がスッと抜けるのはやはり違和感がある。

Vanessa Beelli MosellのLisztアルバム

つい最近聴いたデビュー盤では今一歩の印象だったMosellだが、Lisztアルバムということでまた手が伸びてしまった。しかし印象は今回もあまり変わらず。ただこれは録音のせいのあるのかもしれない。全体的にピアノの音がパサパサしていてタッチが今ひとつ洗練されていないように聴こえてしまう。

Nikolay Khozyainovのデビュー盤

(私はほどんど聴いていなかったが)前回Chopinコンクールでファイナルまで進み、結構話題になったらしいKhozyainovのデビュー盤(ちなみにその後もダブリンで1位、シドニーで2位など赫々とした成績を収めているようである)。だがこのデビュー盤を聴く限りはそれほどの魅力は感じられなかった。Chopinの2番ソナタは平凡な出来に思えるし、ダンテソナタもあまり心に響かず、最後のフィガロファンタジーも個人的には少し前のShevchenko盤の瑞々しさの方が印象に残る。

Alexej Gorlatchピアノリサイタル

GorlatchのBeethovenでは、28番ソナタもこのアルバムに含まれている。終楽章のフーガでの安定感や緻密さはさすがだが、他の楽章はちょっと表現がstaticな感じがして、(期待の高さからすると)やや物足りない面があるか。その他のMozart, Chopin, Bartokあたりを聴くと、全体的に真面目という言葉がよく似合う。これらの曲ではもう少し遊び心とかノリの良さのようなところがあってもよいと思うけど。。

Alexej GorlatchのBeethovenピアノ協奏曲第3番ほか

メインの協奏曲第3番のライヴも佳演であるが(そういえば優勝した浜コンでも弾いていた)、それより印象に残ったのが併録の第1番ソナタ(こちらはスタジオ録音)。1番というとたいていはソナタ全集の1つとして、あるいはOp.2の3曲の1つとしていわば抱き合わせで録音されることが多く、この曲だけ取り上げるということはあまりないと思うが、今回敢えてそうしただけのことはあり、特に奇を衒っているわけではないのだが、真摯に突き詰めればここまで充実した演奏になるのかと感銘を受けた。Gorlatchは浜コンでも1次で弾いたテンペストが1番印象に残っているし、今Beethovenのソナタを弾かせれば一番期待できるピアニストかもしれない。(チクルスでも録音しないかな。。)

Alessio BaxのBrahmsアルバム

第3回浜コン優勝者のBaxがBrahmsパガバリを弾いているということで興味を持って聴いてみたが、予想外に(当時私はあまりBaxを買っていなかった)良い出来だった。第1変奏からスピード感、キレがあり、音も輝かしい。ただ惜しいのはスピードを重視し過ぎるせいか、ときに細部が曖昧というか誤魔化しっぽく聴こえること(たとえば第14変奏)。(ちなみに全く覚えていなかったか浜コンでも2次で1巻を弾いていて、これを読むとやっぱり勢い重視で雑という感想を持っていたようだ。)なお併録のバラードやOp.76など歌心や音楽センスが問われる曲はいまひとつ。

Vanessa Benelli Mosellのデビュー盤

安いので抱き合わせ用に買ったCDであるが、Scriabinの1番ソナタはよくわからないので置いとくとして、Prokofievの7番とLisztスペイン狂詩曲は(それほど悪くはないけど)デビュー盤ならばもうひと押し欲しいといったところ。プロコ7ということであれば、この間終わった第8回浜コンの3次でのKim Joonの演奏(2013/1/31まではここで聴ける)の方がずっと印象に残る。ただHaydnのHob.XVI:34は推進力があってなかなかよかった。

Konstantin LifschitzのJ.S.Bachピアノ協奏曲集


気のせいか最近(時代楽器主流のこのご時世に)ピアノによるこの曲集の録音が多い気がする(FrayやTharaudも弾いているようだが未聴)。Lifschitzの演奏は、あくまで端正なPerahia盤と、表情たっぷりのDinnerstein盤の中間のようなアプローチ。ただ1番終楽章のカデンツァ前の部分で曲にそぐわないような大きなルバートを入れるのはちょっと賛成しかねる。(他の曲ではそのような大仰な表現はないのだが。)