Gouldの未リリースのライヴ録音を中心にまとめた6枚組で、19曲中13曲が初出という大盤振る舞い。これがもしSony Classicalだったらチビチビと出し惜しみするところだろうから、Sonyに権利が渡ってなくて本当に良かった。
今回特に興味があったのがBrandenburg協奏曲とBrahmsのピアノ協奏曲第1番。Brandenburgはこれまで'harpsipiano'による演奏(LDに収録)とAdlerとの共演盤があったが、これにもう1種加わることになる。Adlerとの共演盤は実は私の愛聴盤で(この盤についてはそのうち記事を書きたいと思う)、それに比べると今回の演奏はテンポは常識的(Adler盤はかなり遅め)だけど、ピアノの音量がやや小さめに録られていて(と言ってもバランス的にはこちらの方が生に近いと思うが)、Gouldのピアノの至芸を楽しむという点ではちょっと及ばないかもしれない。ただそれでも十分に魅力ある演奏だと思う。
一方のBrahmsもこれまで2種(Bernsteinとの共演盤と、Adlerとの共演盤)あり、後者が私の愛聴盤であることは以前に書いたが、今回のは残念ながら今ひとつ。録音年が'59年ということでBernsteinやAdlerとの共演盤(いずれも'62年)のようなテンポの一貫性を重視した彼独特の解釈をまだ確立しておらず、また録音のせいかピアノの音もやや荒っぽい。単に慣習的な解釈による、音質の悪い演奏になってしまっているように感じた。