Nikolai Tokarevの’Black Swan Fantasy’

ロシアバレエ音楽のピアノ編曲集。'98年のデビュー盤でも弾いているPletnev編のくるみ割り人形は、テクニックもしっかりしていて安心して楽しめる。Stravinskyのペトルーシュカ3楽章もデビューの頃に録音しており、そちらはリズムのタメの入れ方などもう一つ…

Jonathan BissのSchubertピアノソナタ第15&20番ほか

昨日のBeethovenのついでに一緒に買ったもの。こちらの方が録音が少し古いが印象はほぼ同じで、ライヴであることを感じさせないほどすっきりと整っているのだけど、やはり音が軽い感じで、もう一段の深みのようなものが欲しい気がする。もっとも20番は苦手曲…

Jonathan BissのBeethovenピアノソナタ集Vol.1

5,11,12,26番の4曲を収録。ネットショップで(聴けるところだけ)試聴したときは悪くなさそうに思えたのだが、じっくり聴いてみると少し物足りない。解釈は正統的でテクも悪くないが、録音のせいか全体的に音がやや軽く、強弱やアクセントなどにもう少しメリ…

Geoffrey BurlesonのSaint-Saënsエチュード全集

Saint-Saënsのエチュード集は久しぶりに聴いたが、やっぱりこの中ではOp.52-6(ワルツ形式で)とOp.111-6(第5協奏曲フィナーレ)の2曲が突出していて、他は正直しばらく(ずっと?)聴かなくてもいいかなと改めて感じた(笑)。演奏の方も、音は明晰で悪くなものの指…

Olli MustonenのScriabinアルバム

MustonenのScriabinというのは個人的にはちょっと意外な感じ。Scriabinの音楽というと何か茫として音が融け合っているイメージがあるが(Gouldの録音などもそんな方向を目指していた)、Mustonenの手にかかると1つ1つの線が明確な輪郭を持ち、響きは決して…

Igor KamenzのLiszt & Rachmaninovほか

リリースは2009年(録音はもっと古く'99年)だが先月のレコ芸の月評に載っていて気がついて買ったもの。Kamenzは以前のLisztアルバムがイマイチだった記憶があるが、今回は収録曲がいかにも私好みでつい手が出てしまった。今度は多くを期待してなかったせいか…

Andrei KorobeinikovのShostakovichピアノ協奏曲第1&2番ほか

Korobeinikovは2006年の浜コンで聴いて以来わりと贔屓にしているピアニスト。もともとが地味なピアニズムの人だけにこのような協奏曲で魅力を発揮するのはむずかしいのではと危惧していたが(Melnikovのときもそんなことを言っていたような)、果たして今ひ…

Yuja Wangの’Fantasia’

以前の盤で編曲物を出し惜しんでいるのではないかと思ったら、こっちにとっておいたみたい(それでもまだ入っていない曲があるけど)。今回も相変わらずよく回る指で、たとえばカルメン変奏曲など細部まで精巧に弾き込むさまはまるで細密画でも見ているかのよ…

Joseph MoogのRachmaninovピアノ協奏曲第3番ほか

メカは定評(?)のあるMoogのラフ3ということでちょっと興味があって買ってみたが、確かに第2楽章の中間部や第3楽章での細かな動きの部分では歯切れのよいcrispyなタッチでサクサクと突き進んでいくのが面白い。ただ例によって微妙なニュアンスとか陰影といっ…

Enrico PaceのLiszt巡礼の年 第1&2年

かつてLisztコンクールで優勝しただけあって、端正で正統派といった感じのLiszt。特に私の好きなダンテソナタが秀演なのがポイントが高い。欲を言えばオーベルマンの谷のクライマックス部分ではもう少し怒涛の攻めを見たいし、ダンテソナタの最後のPrestoは…

Simone DinnersteinのBach & Schubert

楽しみにしてたDinnersteinの新譜だが、結果は正直ちょっとガッカリだった。今回はパルティータということでBerlin Concertでのフランス組曲5番のような、しなやかで優美、それでいて活き活きとした溌剌さを含んだ演奏を期待していたのだが、全体的にちょっ…

Alexander MelnikovのShostakovichピアノ協奏曲第1&2番ほか

このところ出すCDすべて素晴らしい出来のMelnikov。今回は協奏曲ということもあっていつもほどは彼の美点が出にくいのではないか、と思った私が浅はかだった。これまで1番は(数えてみたら)26種聴いているが、これほどニュアンスや表情に富んだ演奏は記憶にな…

Denis MatsuevのShostakovichピアノ協奏曲第1&2番ほか

昨日のLisztに比べるとこちらはだいぶ大人しいというか(それでも普通の水準から言えば十分キレている)、作品に真摯に取り組んでいる感じがする(Lisztが真摯でないというわけではないけど)。それでも1番の終楽章のカデンツァ以降の猛烈な追い込みはなかな…

Denis MatsuevのLisztピアノ協奏曲第1&2番ほか

Liszt大好きというMatsuevだけあって(知らなかったが、優勝したチャイコンでも1番を弾いたらしい)、いずれの曲も豪快というか豪腕というか、デビュー盤のメフィストワルツを思わせるような図抜けた運動能力が遺憾なく発揮されている。これでさらにタッチの…

Kristian BezuidenhoutのMozart鍵盤作品集Vol.3

以前Vol.1を買ったことがあるシリーズで、今回は私の好きなK.333のソナタが含まれているので購入。K.333はどちらかというと優美路線で、個人的にはもう少しダイナミックさが欲しかったが、悪くはない。ただこの曲の最大の見せ場とも言える終楽章のカデンツァ…

Olivier MoulinのLisztアルバム

Moulinは1978年フランス生まれのピアニストで、これがデビュー盤ぽい。陰影を付けずに屈託なくストレートに弾き進むのはDanse macabreやTotentanzのような技巧顕示主体の曲ではある意味気持ちが良いのだけど、ペトラルカのソネットや葬送、ダンテソナタの緩…

Giovanni BellucciのLisztハンガリー狂詩曲全集

Bellucciはもうピークを過ぎた人という認識なので迷ったが、やっぱり買ってしまった。結果は、買って損をしたというほどではないけど、買わなくても特に後悔はしなかっただろうなといったところ。歌心があり語り口も上手いのだが、曲によっては技術的な面で…

Hardy RittnerのBrahmsピアノ協奏曲第1番

時代楽器(1854年製エラール)による演奏。軽めのひなびた音が私の好きなGould盤と似た雰囲気があり、またGould盤と同様にそれほどルバートを入れないところは好感が持てる。欲を言えばGould盤くらいテンポの一貫性を徹底してくれたらよかったけど。

Ursula OppensのRzewski不屈の民変奏曲

去年買った盤の感想が続く。これは当初Vanguardから出ていたもの('78年録音)の、レーベルを変えての再発盤。全体的に指回りは悪くないが、録音のせいもあるのかダイナミックレンジというか強音での鋭さがもう一つで、そのためやや迫力に欠ける感がある。なお…

Sergio TiempoのLiszt & Tchaikovsky協奏曲

Tiempoは久々に聴く気がするが、相変わらずぶっとんだ演奏を聴かせてくれる。Liszt死の舞踏の爆演というとMatsuev盤が記憶に残るけど、馬力のMatsuev、瞬発力のTiempoと言ったところか。Tchaikovskyもダヴルオクターヴのパッセージでは腕が鳴って仕方がない…

2010年エリザベートコンクールピアノ部門ライヴ

新年おめでとうございます。 去年買ったCDの感想がまだ少し残っているのでその続き。これは注文したのはだいぶ前だけど先月やっと届いたもの。入賞者の協奏曲の演奏が中心に収録されている。コンクールの様子はネットではほとんど見ていなかったので各演奏は…

今年最も印象に残った10枚

今年買った盤の感想がまだ終わっていないが、とりあえず締めくくりとして今年の10枚を。今年も順位は付けずにブログ掲載順に並べている。 Simone Dinnersteinの'Bach: A Strange Beauty' Alexander MelnikovのBrahmsピアノソナタ第1,2番ほか Dejan LazicのBe…

Abdel Rahman El BachのJ.S.Bach平均律第1巻

国内盤は高くてちょっと手を出す気にならないところへ、海外ショップで安く手に入るようになり購入。El Bachらしい明晰なアーティキュレーションによるキビキビとした演奏を期待していたのだが、全体的にタッチがちょっと重い。その上音色の変化が乏しく(こ…

Stephen HoughのLiszt & Griegピアノ協奏曲

今回の協奏曲はライヴではなくセッション録音。これまでの彼の協奏曲に秀演が多いのは実はライヴであることも関係しているのではないかと思っているので今回のはどうかとちょっと心配していたが、結果的にはそれがほぼ当たってLisztの1番とGriegはいまひとつ…

Shai WosnerのSchubertピアノソナタ第15&17番ほか

昨日のLewis盤と曲がかぶっているが、聴いたのは実はこちらの方が先。レリークは一音一音を慈しむようなじっくりとした足取りで、こういうのも悪くない、というかこちらの方が解釈としては普通か。録音のせいかLewis盤に比べると微妙に音が硬い感じがする。

Paul LewisのSchubertピアノソナタ第15,17,18番ほか

Lewisの久々のSchubertソロ録音。思えばデビュー盤の14&19番を聴いて以来彼には注目してきたわけだが、今回の新譜を聴いて、やはり今Schubertを弾かせたら最も信頼できる弾き手であると再認識した。大好きなレリーク第1楽章は思いのほか速めのテンポだったが…

Henri SigfridssonのSibelius交響曲第2,5番(ピアノ独奏版)

Sibeliusの交響曲は実は(サワリの部分を除いて)これまで聴いたことがなかったが、今までも春の祭典とかシェエラザードとか、ピアノ編曲版から入ってその曲の良さを知る、ということが多々あるので買ってみた。結論から言うと演奏が今ひとつパッとしないこと…

Andrew von OeyenのLisztアルバム

全体的にカチッとした楷書的な演奏。ロ短調ソナタでは見せ場でもあまり思い切った加速を見せずインテンポをキープするような傾向があるので、良く言えば機械のように精確な、悪く言えばちょっと柔軟さに欠けるような印象を受ける。他の曲はそうでもないけれ…

Evgeny Starodubtsevの20世紀ピアノソナタ集

収録されているのはProkofievの5番、Ginasteraの1番、Szymanowskiの3番、そしてBartok。テク的には特に強さを感じないが、解釈はよく考えられており、1音1音をゆるがせにしない姿勢が感じられるところは好感が持てた。どちらかというと知性派タイプか、と思…

Lang LangのLisztアルバム

Lang Langというと私の中ではもうイロモノ的ピアニストと認識されているのだけど、これを聴くと至極まともというか、技術もしっかりしていて打鍵もクリーン。逆にそれが(自分を含めて)爆演を期待している向きには物足りなく感じてしまう。