以前の盤で編曲物を出し惜しんでいるのではないかと思ったら、こっちにとっておいたみたい(それでもまだ入っていない曲があるけど)。今回も相変わらずよく回る指で、たとえばカルメン変奏曲など細部まで精巧に弾き込むさまはまるで細密画でも見ているかのよう。特に気に入ったのはStaub編の魔法使いの弟子のピアノソロ版で、演奏もさることながら技巧的かつ原曲を彷彿とさせる編曲も素晴らしく、この曲を聴けただけでもこのアルバムを買った価値があったかも。一方で全体的にやや音が軽いためスケールの大きさに繋がらない嫌いがあったり(例えばOp.39-5)、あるいは歌心に難があるせいか(?)緩徐的な部分で細かな表情を付けようとして却って流れが悪くなっていると感じるところもあるけれど(例えばChopinのワルツ)。