先日の'Bach Reflections'がなかなかの好印象で、続編が出たらまた聴いてみたいというようなことを書いたDavid Theodor Schmidtですが、調べたらこの前にデビュー盤が出でいて、そちらもJ.S.Bach関係だということで早速買ってみました。曲はイギリス組曲第6番、Bach/Busoniの「目覚めよと呼ぶ声」ほか2曲、Bach/Hessの「主よ、人の望みの喜びよ」、Bach/Kempffのシンフォニア、そして最後にFranckの前奏曲、コラールとフーガ。
今回もReflectionsと同様、高橋悠治風(?)の明晰さを重んじたロジカルなBachを聴かせると思いきや、イギリス組曲の前奏曲の序奏など結構叙情的というか情感がこもっていて、主部に入るとさすがにキビキビしてくるのですが、それでもこの間と比べると残響が多目の録音ということもあってか全体的に潤いを含んだタッチで弾き進められます。というわけで、演奏自体は悪くないのですが、今回も高橋悠治がもしイギリス組曲を弾いていたら、ということを期待していたこちらとしては意外にオーソドックスな演奏で少し拍子抜け。(まあ勝手に期待する方が悪いのですが。)さらにもう一つと思ったのが編曲物の方で、Bach/Busoniの「いざ喜べ、愛するキリスト者のものたち」では右手の絶え間ない16分音符の粒が今ひとつ揃っていなかったり、Bach/Kempffではちょっと苦しいのかタメが入ったりと、(Reflectionsではそんなことはなかったのですが)技術的にも少し難を見せるところがあって、ちょっと頂けません。最後のFranckもフーガでは少しぎこちないところを見せたりして、まだ完成度が上げられそうです。好意的に見ればこのデビュー盤からこの間のReflectionsの間に成長した、あるいは(Bachに関しては)個性を確立しつつある、ということなのかもしれません。