Sepec/Queyras/StaierのBeethovenピアノ三重奏曲第3,5番ほか

Sepec/Queyras/Staier [HMC 901955]

昨年出たBeethovenヴァイオリンソナタ集が好印象だったDaniel Sepec(ダニエル・ゼペック)とAndreas Staier(アンドレアス・シュタイアー)のコンビに、Jean-Guihen Queyras(ジャン=ギアン・ケラス)が加わって今度はBeethovenのピアノ三重奏曲(第3番と第5番「幽霊」)のリリース。併録はJ.N.Hummelのピアノ三重奏曲第4番。SepecとStaierは当然時代楽器なのですが、Queyrasは(宣伝文によると)モダンのボディにオリジナルのブリッジと弦を使用しているとのこと。

実のところこれらのピアノ三重奏曲はあまりよく知っているわけではない(というか「幽霊」以外は多分初めて聴くかも)のですが、それでもこの演奏はかなりの秀れものと言えるでしょう。時代楽器による演奏に限ればこれ以上の演奏はそうそう望めないのではないでしょうか。(他に今までどんな盤が出ていた知らないのですが…^^;)特に気に入ったのはヴァイオリンのSepec。彼の名前は前回のヴァイオリンソナタ集で初めて知ったのですが、今回も(私がこう弾いて欲しいと思う)時代奏法のツボをことごとく押さえていて、聴いていて非常に気持ちがよいです。時代楽器&奏法の演奏でえてしてありがちな音程の不安定さも全くなく、ボウイングの滑らかでほとんどケチをつけるところがありません。あとStaierの指回りも相変わらず冴えていて、彼の演奏は(HaydnやMozartなどでは必ずしも好きではないのですが)Beethovenのような、Czerny的指回りの良さを要求される曲には向いているなと改めて感じました。ちなみに今回もHummelの最後で例の衝撃音(「トルコ兵」ストップ?)を使っていて、聴く者をちょっと驚かせます。そしてQueyrasなんですが、彼も悪くないのですが、SepecとStaierの目立ち方と比較するとちょっと大人しい感じがしないでもありません。歌わせ方もSepecに比べると中ほどでの膨らませ方など心持ち抑え気味かなと思うところがあります。あるいは彼だけ時代楽器でないのでそれが影響しているのかもしれませんが。正直もしチェロがWispelweyだったらどんなだっただろうと想像しちゃたりします。とは言ってもこのコンビというかトリオには今後も大いに期待したいところです。「大公」あたりを録音してくれると嬉しいですね。