Anthony SpiriのW.F.Bachピアノ作品集

Anthony Spiri

C.P.E.BachとかJ.C.Bachと聞いてもあまり興味が湧かないのですが、W.F.Bachとなるとちょっと別でして、きっかけは昔聴いたMozartの弦楽三重奏曲K404aで、これはJ.S.Bachの平均律その他のフーガを弦楽三重奏に編曲したものに前奏曲を付け加えたもの*1なのですが、この最後の曲(第8番)だけは大BachではなくW.F.BachのフーガF31-8を使ったものになっていて、それが大Bachに勝るとも劣らぬ名曲だったことです。(実際8曲のうちで一番好きですし、特に終盤で主題とその転回形が絡み合うところなどは何度聴いてもゾクゾクきます。)昔から大Bachの息子の中ではWilhelmが最も才能があり、大Bachも期待していたという話を聞きますが、これを聴くとその話もわかるなぁと思ったものです。

ということもあって以前からW.F.Bachの鍵盤作品は、チェンバロやオルガンで弾いたものは聴いてきたのですが、今回のようにピアノで弾いたものはちょっと珍しいかな、ということで買ってみました。演奏はAnthony Spiri(アンソニー・スピリ)。曲は幻想曲、ソナタ、フーガがそれぞれ3曲で計9曲です。ただ残念ながらF31-8は入っていません。

前置きがやや長くなってしまったのですが、というのも実は聴いてみたらぶっちゃけ思ったよりは面白くなかったな、というのがあってあまり書くことがないから(笑)。曲的に例のF31-8のフーガが入っていないというのも大きいのですが、それを差し引いても(例えば幻想曲などでも)大Bachのものに比べるとやっぱり閃きや緊張感に欠ける感じです。(まあ8つのフーガF31でも、実は第8番以外はそれほどなんですが。)Spiriの演奏も良心的でいいとは思うのですが、せっかくピアノを使うのならばその表現力を駆使するなところがあってよい気がしました(RameauでのBartoほどとは言いませんが(笑))。特にフーガでは声部の弾き分けにもう少し工夫を見せて欲しかったところです。

*1:現在は偽作説が有力だそうです。