リズムの人、旋律の人、和声の人

最近あまりCDを買っていなくてネタも夏枯れ気味なので、ふと思いついた話を。

よく音楽を形成する3要素として、リズム、旋律、和声があると言われますが、各作曲家をみていくと、それぞれの得意分野というか、その人の特長が最も現れる要素(その要素を「指向する」と言ってもいいかもしれません)があるように思います。

  • リズムの人…Beethoven, Prokofiev, Bartokなど
    ピアノの打楽器的な使用をよくする人はだいたいここでしょうね。StravinskyやD.Scarlattiなんかもここに入りそうです。
  • 旋律の人…Mozart, Schubert, Tchaikovskyなど
    メロディー・メーカーと呼ばれるような人は多分ここでしょう。ジャンルで言うと、歌曲やオペラを志向する人ですかね。Rachmaninovなんかもここかな。
  • 和声の人…Chopin, Scriabin, Debussyなど
    斬新な和声が特徴だったり、新しい和音を「発明」しちゃったりするような人はきっとここですね。Chopinも稀代のメロディー・メーカーではありますが、実のところ一番の特長は繊細で緻密な和声進行なのではないかと。

もちろん非常に大雑把な捉え方であることは百も承知ですし、また分類についても人によって異論はあるでしょうが、とりあえず私の感じ方ということで。J.S.Bach, Liszt, Schumann, Brahmsなど、どこに分類すべきかすぐに思いつかない人も多いですけどね。(まあBrahmsが旋律の人でないことは確かでしょうけど(笑)。)

自分自身を考えてみると、(もちろん作曲はしないので好みの面ですが)これはもう断然リズムの人ですね。現代音楽でも、無調はあまり気にならないが無拍子ものは受け付け難い*1とは昔からよく言っていますし、リズムが生き生きとしていることが曲を楽しむ上で最重要な要素であることが多いように思います。逆に苦手というか、感度があまり高くないのが和声的な観点でしょうか。解説などで「斬新な和声」とか言われても「はぁ、そんなもんですか」ぐらいに思わないこともよくありますし、ChopinやScriabinなどピアノ好きでもコアなファンが多い作曲家ですが、私自身としてはそれほどのめり込めないというか、ちょっと引いたところがあるのは確かです。(Scriabinでもソナタで言えば一番魅力を感じるのは4,5番のようなリズム的な面白さのある曲ですし。)またリズム的な動きが少なく響きだけで聴かせるような静謐な曲も苦手とするところです。「作曲家というより作響家」と言われた武満徹などは私の理解から最も遠いところにある作曲家と言ってもいいでしょう*2

芥川也寸志の「音楽の基礎」を読むと、リズムは3要素の中では最も根源的な要素ということですし、成立の過程もリズム→旋律→和声と進んできたというのは多分間違いないでしょうから、そう考えると私の音楽的嗜好はもっとも原始的な段階にあると言えるのかもしれませんね(笑)。

*1:必ずしも「無拍子=無リズム」ということではありませんが。

*2:普通のピアノ曲を生で聴くときなどは音(響き)の美しさはかなり気にしますけどね。