ルール・ピアノフェスティバル1997-2004(その1)

Klavier-Festival Ruhr

1/19のエントリへのコメントでも書いたように、Chopinについて日頃思っていることを書こうと思ったのですが、Chopinに対するアンビヴァレントな思いからか(?)うまくまとまらず(^^;)、しかたないのでしばらく保留することにして、まずは注文していたルール・ピアノフェスティバル1997-2004(10CD)が届いたのでその感想第1弾を。10枚組ということではじめは1枚1エントリのペースで感想を書いていこうかと思ったのですが、聴いてみたらCD1,CD2はそれだけで1エントリ書くほどではないという感じで、CD3になってやっと面白くなってきたのでCD1〜3の感想をまとめて書くことにしました。ちなみにCD4以降はまだ聴いていません。(なお各CDの収録曲と演奏者はたとえばここに載っています。)

まずはCD1,CD2についてもサラっと感想を書いておくと、CD1(1997年)は、Glemser, Hamelin, M.Grohなど演奏者はかなり興味をそそるもので、もちろん演奏も悪くはないのですが、ただ先ほども言ったように強く印象に残るとまではいかず、強いて言えばHamelinの弾くChopinのバラード1,2番の洗練されたタッチと軽やかな指捌きがさすがという感じです。CD2(1998年)はそれに比べると個性的な演奏が割合多く、特に最初に置かれたCascioliによるJ.S.Bachのフーガの技法からの2曲は、彼のこの曲に対する思い入れが強く感じられるものなんですが、ただこだわりが強すぎるのか流れが悪い感じがして、演奏としてはもうひとつでした。

CD3(1999年)ではまずMarc Laforet(マルク・ラフォーレ)によるChopinが光ります。ワルツOp.34-1もよいですが、特にスケルツォ第1番での切れ味が秀逸で、(予め演奏者を見ずに聴いていたので)思わず誰の演奏?と惹きつけられました。Laforetに関しては(もちろんChopinコンクールで2位というのは知っていましたが)正直これまで全く興味が無い、というか多分聴いたこともなかったのですが、食わず嫌いはいけませんね。次のMichael Ponti(マイケル・ポンティ)も、正直今までそれほどよいイメージを持っていなかったのですが、バラード第4番など(アゴーギクにちょっと癖はありますが)伸び伸びとした歌心に溢れていて、音コンでよく聴かれるような真面目だけど退屈な演奏とは一味違います。そして最も印象に残ったのが、Stewart Goodyear(スチュワート・グッドイヤー,1980-)のピアノソナタ第1番(の第1楽章)の自作自演。初めて聴く曲ですが、ビート感溢れる、多少ジャズ的要素も加わった現代風のクールな曲で、演奏もノリノリといった感じです*1。ライナーに曲の解説は載っていなかったのですが、全曲版を是非聴いてみたいところです。それにしても前回エントリ(Vol.9)のボーナスCDに入っていた保守本流(?)の現代音楽と聴き合わせると、現代音楽ももっとこういう方向の曲を産み出していたら、今ほど聴衆の遊離を招かなかったのではないかという思いにかられます。

ちなみにCD3には最後にBusoni, Rosenthal, Levitzkiのピアノロールの再生ピアノによる演奏も収録されているのですが、個人的にはこちらは(世間ではこの時代のピアニストをえらくありがたがる風潮もあるようですが)資料的価値はあるかもといったくらいでしょうか。(再生ピアノがどれだけ元の演奏の雰囲気を伝えているのかにもよりますが。)

*1:ちなみにGoodyearはまだ27歳、作曲家というよりは作曲もするピアニストと言った方がよさそうです。