Jean Dubeの”Toccatas”

Jean Dube

J.S.BachからProkofievまで、18人の作曲家による"Toccata"を集めた企画物アルバム。SchumannRavel,Prokofievの3大トッカータ*1を始め、Saint-Saens(Op.111-6),Debussy,Poulencなど割とメジャーなものからClara Wieck,Chaminade,Holstなどマイナーなものまで、ここまで一枚に取り揃えたCDは意外にこれまでなかったように思います。

演奏はJean Dube(ジャン・デュベ)。彼もDossinと同様'97年の浜コンに出ていて(当時15歳で最年少出場者)、3次まで進んでいるのですが、そのときはまだ荒削りな感じがあり正直印象はそれほど芳しくないです。それ以前にも'95年の若い音楽家のためのTchaikovskyコンクール@仙台(優勝はLang Lang、上原彩子が2位)に出ていて、そちらは直接聴いてはいないのですが、NHKのドキュメンタリー番組があって、そこで本選に残れなかったことについて聞かれて「きっと(本選に進む)6人をでたらめに選んだのさ」と、悲しさと悔しさをにじませて答えていたのが強く印象に残っています。(それに続けて「僕はピアノの巨匠になってコンサート活動をしていくよ」と言っていたのですが、実際これまでにCDも何枚か出しており、巨匠になれるかはともかく、まずまず順調な道を歩んでいると言えるでしょう。)

前置きが長くなりましたが、全体を聴いてみた印象としては、演奏よりは曲を聴くCDという感じでしょうか。要するに、いろいろな作曲家によるトッカータの聴けて、コンセプトとしては面白いけど、1つ1つの曲を取り出してみると、演奏的にはもう少し磨く余地があるのではないかと思えることがあります。Scarlattiなどはタッチにもう少し精妙さが欲しいところですし、SchumannRavelは技術的な鮮やかさの点でやや物足りません。ただそんな中でなかなかよいと思ったのがDube編によるJ.S.BachのトッカータとフーガBWV565。細かく比較したわけではないですがBusoni版より編曲に無理がない感じで、それでいて同等の効果を上げているように思います。あとSaint-SaensやKatchaturianも溌剌とした好演。Prokofievは全体としては普通なのですが前半部でのトリルがきれいにキマっているのが(割と珍しくて)印象に残りました。

*1:難度と知名度から私が決めさせていただきました(笑)。