Joseph MoogのLisztピアノ協奏曲1&2番ほか

Joseph Moog

1987年生まれのドイツの若手、Joseph Moog(ヨゼフ・モーグ)の弾くListのピアノ協奏曲集1,2番と死の舞踏。普段はLisztの協奏曲というと特別な事情(お気に入りのピアニストとか)がないとなかなか食指が動かないのですが、ちょっと前のレコ芸の海外版試聴記で結構誉められていた気がして(立ち読みなので詳細は忘れてしまいました^^;)、それでちょっと気になって買ってみました。ちなみにこれがデビュー盤のようですが、デビュー盤がいきなり協奏曲というのは最近では割と珍しいように思います。

全体的にはガッシリとした安定感がある演奏で、骨太な音、小細工に走らない正攻法な解釈と言えるのですが、逆に言えばスリリングなところがあまりなく、(Lisztでは重要な要素となる)技巧を見せつけるとか、オケと丁々発止のやりとりをするとか、そういった要素が乏しいためどこか予定調和的な印象を受けます。少なくとも派手な技巧を売り物にするタイプではなさそうです。また1番はラプソディックな歌い回し、2番は詩情、死の舞踏はデモーニッシュさが曲を表現する上での肝だと思うのですが、彼の健康的とも言えるピアニズムはいずれもにもちょっと不足している感じです。ただタイプとしてはその骨太な音と質実剛健さ加減がPeter Röselに似た雰囲気もあって、ひょっとしたらBrahmsなどドイツ物には結構向いているのかもと思わせるところはあります(それにしてももう少し音色の豊かさが欲しいところですが)。というわけで彼の真価はまだこの一枚では発揮されていない可能性はあるので、次回作が出たら気が向いたら買ってみるかもしれません。