Nikolai Tokarewピアノ・リサイタル

Nikolai Tokarew

Nikolai Tokarew*1(ニコライ・トカレフ)のSony移籍第1弾。曲はChopinのソナタ第2番、Bach/Silotiの前奏曲ロ短調Schubertの楽興の時、Lisztラ・カンパネラ、Rosenblattのパガニーニ変奏曲、ボーナスCDにMussorgsky/Khudoleyの禿山の一夜とProkofievのトッカータ。Tokarewは昔国内レーベルから数枚CDを出していて、そのときは1枚だけ聴いただけでそれほど気に留めなかったのですが、今年になってから聴いたルール・ピアノフェスティバルのライヴCDでは抜群の存在感を示していたので、今回は期待して聴いてみました。

で、結果としてはちょっと期待はずれ、というか肩透かし。まずボーナスCDの方から聴いてみたのですが、禿山の一夜は編曲のせいなのか演奏のせいなのか、Berezovsky盤(こちらはTchernov編曲)に比べるとおどろおどろしさや盛り上がりにやや欠ける気がして、またルール・フェスティバルの編曲特集で見せたようなエネルギッシュさに比べて今回は妙に落ち着いてしまっていて、思ったほど面白くもない感じです。(ちなみに個人的にはあちらで弾いたRimsky-Korsakovのシェエラザードパラフレーズを瑕のない形で録音してくれたらなと思いました。)Prokofievのトッカータも、やや遅めのテンポながらインテンポをきっちりキープしてマシンのような演奏なのですが、文字通り機械的でやや表情に乏しく、確かに15歳時の録音である旧盤に比べるとずっと精度は上がっているのですが、魅力的かどうかは微妙かもしれません。

本CDになるとその傾向はさらに強まって、最初のChopinからかなり抑制されたお行儀のよい演奏(悪く言えば平凡で退屈)で、実のところ密かにTiempoのような演奏を期待していた(同タイプのピアニストかと思っていました)だけに拍子抜けです。SchubertやLisztも同様。特に悪いというわけではないですがルール・フェスティバルではあれほど熱い、生気に満ちた演奏をしていたのに今回はどうしたことかという感じ。最後のRosenblattもJazz風の曲にしてはグルーヴ感や奏者の感興のようなものがあまり伝わってきません。ひょっとして彼はライヴでないと燃えないタイプなのでしょうか。

*1:Tokarevと綴られる場合もあります。