ルール・ピアノフェスティバル1997-2004(その3)

Klavier-Festival Ruhr

前々回前回に引き続いてCD6,7,8の感想です。

CD6(2002年)も前年に引き続き質の高い年で、Tzimon BartoのRameau、Dorel GolanのClementi、Martin HelmchenのLisztスペイン狂詩曲などなかなかの秀演が揃っています。その中で印象深かったはJonathan Gilad(ジョナサン・ジラード)のBeethovenピアノソナタ第5番。これまた初めて聴くピアニストなんですが、カッチリとツボを押さえた隙のない演奏で、Schenck盤以来ひさびさによい演奏に出会えました。そしてNikolaus Lahusen(ニコラウス・ラフゼン)のSchubertのD946-1。これは演奏自体もよいのですがフォルテピアノを使っているのが耳を引く(?)ところで、こういう時代楽器演奏も取り入れているところがこの音楽祭の懐の広さかなという気がします。

CD7(2003年)は一転して全体としてはもう一つと思える出来で、特にVladimir Kharinの弾くChopinのアンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ、Alexander Ghindinの弾くProkofievのソナタ第3番などは精彩を欠いている感じです。Anna KravtchenkoのChopin前奏曲も、収録されているのが1,2,16番のみというまことに中途半端なもので、前奏曲集ならせめて連続した5,6曲を入れたいものです(これは多分編集の問題ですが。また最後に入っている彼女のSchumann/Lisztの献呈はなかなかの佳演)。そんな中にあってDenys Proshayev(デニス・プロシャイエフ)の弾くJ.S.Bachのイタリア協奏曲は溌剌として清涼感があります。

CD8(2004年)は収録されている全6曲のうちHaydnが3曲、Mozartが2曲とさながら古典派特集。演奏も全体的に悪くありません。特に印象的だったのがPeter Josza(ペテル・ジェーシャ)の弾くMozartのソナタK311。表情に変化をつけるために部分部分によって結構テンポを変えていて、本来そういう演奏はあまり好きではないのですが、そういうことがあまり気にならないほど伸び伸びとした自由闊達な雰囲気が溢れていて(特に終楽章)、思わず「惚れた!」という感じです。(最近はMozartのソナタフォルテピアノでの演奏の方が好みなんですが、こういう演奏を聴くとやっぱりモダンピアノもイイね、となります。)Anika Vavicの弾くHaydnのHob.XVI-46もよいのですが、終楽章でちょっと指が転ぶようなところがあるのが残念。