Andrew RangellのJ.S.Bachピアノ作品集

Andrew Rangell

Andrew Rangell(アンドリュー・ランゲル)によるJ.S.Bachピアノ曲集。Rangellは以前Dorianにゴルトベルク変奏曲や6つのパルティータを録音をしていて、それらは私のお気に入り盤(特にゴルトベルクは最も好きな盤と言ってよいです)なのですが、今回は別レーベル(BRIDGE)からで、曲はフランス風序曲、半音階的幻想曲とフーガ、イタリア協奏曲の3つがメイン。他に小前奏曲などが入っています。

彼の演奏の特徴というと、ノン・レガート風の歯切れのよいアーティキュレーションを用いつつ、アゴーギクや装飾音などは歴史奏法を踏まえ、さらに内声やバスを大胆に強調したりときにはリズムを変えたりとかなり自由な演出を施すもので、そこが私の気にって入るところですが、当然のことながら今回もその基本線は変わらず。さらに半音階的幻想曲ではちょっと奇妙(?)なフレージングを見せるなどやはり一風変わっています(同じく幻想曲でのバスの目立たせ方などはGould風)。ここまでくるとRangell節と言ってもよいでしょう。(ピアニストも'〜節'と言われるようになるとidentityの証ですかね(笑)。)ただ(以前の6つのパルティータでも多少その傾向がありましたが)タッチがややゴツゴツしている感があって、意欲的なアーティキュレーションに指がついていかない、とまでは言いませんが少なくとも洗練されたタッチとは言いにくく、人によって好悪を分けるかもしれません。最初のゴルトベルクではそんなことはなかったので、多少は衰えがあるのかもしれませんね(ちなみに彼は1948年生まれ)。あとフランス風序曲の終曲(エコー)に関しては、forte/pianoの指定を必ずしも守っていないところがあって、(個人的にこの頻繁な交替が好きなので)そこは少し残念でした。