Bacchettiというピアニストは今まで知らなかったのだが、少し前のレコ芸海外盤試聴記で好意的に採り上げられていたのを機に購入。聴いてみたところ、解釈は装飾音を割と自由に入れているのを除けば至ってシンプルというか素朴。Fellnerのように現代ピアノの利点を活かしてタッチを綿密にコントロールするという風でもなく、歴史的奏法を意識したアゴーギクも用いるというわけでもない。インベンションの方はそれでまだよいのだが、併録のフランス組曲やパルティータとなるとさすがにこのアプローチだと淡々とし過ぎてちょっと退屈。ただ6つの小プレリュードなどはこれまでGouldの才気走った演奏の刷り込みがあったせいか、彼の朴訥な演奏が却って新鮮に感じられた。