Hilliard EnsembleのJ.S.Bachモテット集

Hilliard Ensemble

OVPPによるモテット集、しかも歌うのがあのHilliard Ensembleヒリヤード・アンサンブル)ということで買ってみました。彼らは'80年代にもEMIに録音しているのですが、そのときはソプラノだけは少年合唱を使っていて、私は少年合唱はどうも好きになれない(その方がauthenticなのかもしれませんが)のでその盤はあまり聴いておらず、当時でいうとHerreweghe盤の方が好きだったものです。その後いろいろ聴きましたがJunghänel/Cantus Cölln盤が出た後はそれが私の中で決定盤みたいになったのは以前書いた通り。

この盤の特徴としては(BWV230を除いて)完全にアカペラでやっていること。Kuijken新盤のときの感想では、伴奏が出過ぎると合唱の純粋な美しさが味わいにくくなるのでアカペラでもいいんじゃないか、と書いたのですが、実際聴いていみると正直ちょっと違和感がありました。全体がややのっぺらとして、リズムの躍動感に欠ける感じです。これは彼らの演奏スタイルから来るものもあると思いますが、唯一オルガン伴奏付きのBWV230はその傾向が少ない気がするのでやはり伴奏の有無の影響もありそうです。伴奏によってアクセントやリズムが補強される、という効果が得られないということなのでしょう。というわけでどちらかというとリズムやアーティキュレーションよりもハーモニー重視という感じがあり、これはルネサンス系の曲にはピッタリだと思うですが、Bachのようなドイツ・バロック向きではない(少なくとも私の中では)かもしれません。そのハーモニーの精度も、特筆するほどではないかな。あと歌に関しては、ソプラノ(のうちの一人のOutram)がもう一つだったような。声がやや表面的というか金切りっぽい感じで、もう少し深みのある響きが欲しかったところです。(これも好みの問題でしょうが。)その意味(?)で、伴奏あり、Outram不在(4声なので)のBWV230が個人的に一番気に入りました。