Viktoria LakissovaのScarlatti賛

Victoria Lakissova

Scarlattiのソナタ集のCDは巷に溢れていますが、これはScarlattiの作品と、後生の作曲家のオマージュ作品を合わせて1枚に収めるという企画物。(ちなみにジャケットに'Music of Tribute Vol.4'とあるように、これまで既にVilla-Lobos, Debussy, Faureのものが出ているようです。Vol.5はJ.S.Bachだそうで。)収録されているのはScarlattiによるオリジナル曲が8曲で、残りはFrancaix, Manziarly(1899-1989), Nikolovski(1925-2001), Alkan, Lewenthal, Hamelin, Godowsky, Steffens(1934-), Kurtag(1926-)という面々によるもの。これらの曲が交互に並べられています。演奏はViktoria Lakissova(ヴィクトリア・ラキッソヴァ)というロシアの女流ピアニスト。

聴いてみましたが、これはなかなか良質のアルバムといえそうです。Lakissovaの演奏は、結構ストレートな音の出し方で、もう少し音色に陰影のようなものがあってもよいかな(Pletnevまでいくとやり過ぎですが)、また緩徐系の曲はちょっと四角四面過ぎてもう少し歌が欲しいかな、と思うところはありますが、ハキハキとして溌剌感溢れるところが魅力です。特にHamelinの'Essercizio per pianoforte'(エチュード第6番)は、Kaleidoscopeに収録されている自作自演がサラっとしている感があるのに対し、彼女の演奏はよりフレージングははっきりしてメリハリがあり、曲の面白さがよく伝わってるように思います。現代の作曲家による作品も、前衛的な、いわゆる「現代音楽している」のはKurtagによるものくらいで、他のは非常にわかりやすい曲と言えるでしょう。(Kurtagの作品も演奏時間が30秒余りで、すぐ終わります。私にはどのあたりがScarlattiなのかさっぱりわかりませんでしたが(笑)。)ちなみにAlkanによる作品(Duettino alla D.Scarlatti)は、彼のエチュードなどのようにイっちゃっている感じはあまりなくてやや肩透かしだったんですが、音域が高音部に偏ってあたりがMozartの自動オルガンのためのアンダンテK616を思い出させるところがあります。

今回の収録曲の中で一番印象に残ったのは、やはりHamelinの作品でしょうか。実際この演奏を聴いてこの曲の面白さに開眼したクチです。(もちろん技術的な洗練という点ではHamelinの方が上ですが。)