6つの異なるカデンツァによるBeethovenピアノ協奏曲第3番

Michael Rische

Beethovenのピアノ協奏曲第3番の第1楽章のカデンツァを、Beethoven自身を含め色々な作曲家よるバージョンで聴き比べられる、というのがこのCDのミソ。アイディアは面白そうなんですが、演奏者を見るとMichael Mische(ミヒャエル・リーシェ)。実は以前この人のCD(様々な作曲家によるJ.S.Bachオマージュ作品集)を買ったことがあるのですが、演奏がイケてなかった覚えがあって、それでちょっとためらわれたのですが値段を見ると700円ちょっと、ということで買ってみました。(そういう意味では価格設定の勝利?)

入っているカデンツァはBeethovenの自作を除くと5つ。以下ごく簡単に感想を。(括弧内は演奏時間。)

  • Moscheles(4:28)
    カデンツァとしてはオーソドックスだけどBeethovenのものに比べると華やかさが少なめ。(ちなみに以前はBrahms作とされていたらしい。)
  • Alkan(8:05)
    出だしからちょっと風変わりというか変態的。またやや長いというかしつこいところもAlkanらしい。第5交響曲終楽章からの引用があったりして、そういえばどこかで聴いたことがあるなと思ったら、Hamelinのウィグモアライヴに入っていたAlkan編曲の独奏版ピアノ協奏曲で弾かれているものと同じもの。
  • Schulhoff(4:12)
    これもオーソドックスだが響きが少し近代風。やや盛り上がりに欠ける気がする。
  • Ullmann(4:37)
    これも渋いというか少し地味。
  • Rische(3:53)
    演奏者の自作。途中からのミニマル風なところが面白い。もう少ししつこく続けてもよかったのではないかな。

というわけでざっと聴いてみた感じで印象に残ったのはAlkanとRischeあたり。ただ総合的にはやはり(聴き慣れているせいかもしれませんが)Beethoven自身によるものが一番優れているように思います。というかせっかくのカデンツァなのに(Alkanを除いて)みんな大人しいというか、もう少し羽目をはずしてもよいのではないかという気がします。個人的にはAlkanなどは(目立ちたがり(?)のピアニストなどによって)もっと弾かれてもよいと思うのですが…。

ちなみに演奏自体は(以前聴いたCDほどではないにしても)やはりもう一つという感じで、トリルがキマってなかったり、1音1音が明確でないところがあったりと、指があまり強くないのかな、と思わせるところがあります。また解釈としてちょっとナヨっとした感じ。彼は演奏よりもアルバム企画(コンセプト)とか作曲とか、そっちの方面の方が向いているような気がしました。