J.S.Bachミサ曲ロ短調の聴き比べ
前回ちょっと書いたようにGWの暇な時間を利用して手元のロ短調ミサ曲のCDの聴き比べをしてみた。持っているのは8種なのでそれほど多くないが、試聴だけならこれ以外にもいろいろしていて(と言ってもモダンはRichter盤くらいしか聴いたことがないけど)、ただそれらは買うには至っていない。
以下は改めて聴いてみてのコメント(録音年順)。
- Rifkin/The Bach Ensemble(Nonesuch<82>)[OVPP]
実は初めて聴いたロ短調ミサのCDがこれ。というわけで個人的な思い入れがあり、曲によっては刷り込みもあって今でも好きだけど、でも今聴くと例えば合唱でのメリスマなどの歌い方がやや人工的というか無機的な感じがする。逆に言えばあまり主情的にならず、透明で軽やかな歌い方。OVPPにありがちな、ソロが合唱に比べて明らかに落ちるというのがないのがよい。
- Parrott/Taverner Consort & Players(EMI<84>)[OVPP]
Rifkin盤に比べて解釈が自然で合唱での歌い方にも情感がこもっている。そこは良いと思うけど、一部の歌手(アルト等)の声質に非常に違和感があって、それが全体の印象を悪くしている。特にソロでは致命的。
- Leonhardt/La Petite Bande(DHM<85>)
ソロの充実ぶりは1、2を争う。合唱はそれに比べるとやや印象が弱いが、でも悪くない。全体的に私の感覚からするとテンポがやや遅い。
- Herreweghe/Collegium Vocale(Virgin<89>)
実は下の新盤よりも後に廉価盤で買ったものだが、合唱、ソロともに、悪くはないものの新盤に比べると印象が薄い。というわけで今となっては存在意義が薄いかも。
- Herreweghe/Collegium Vocale(HMF<96>)
ソロも合唱も出来がよく、その意味でバランスがとれている。合唱はHerrewegheらしい柔らかい歌い方が特長的。非OVPPではこれが一番平均点が高いかもしれない。
- Helgelbrock/Balthasar-Neumann-Chor(BMG<96>)
合唱が素晴らしい。Herreweghe盤などと違い、合唱の輪郭がシャープでキレがある。個人的には合唱はOVPPの方が好きだが、それでもこの合唱は認めざるを得ない。それに比べるとソロは、合唱の中から上手い人を選んでいる(?)レベルのせいか、合唱ほどの高みには達していない。あと冒頭のKyrieは、他盤が概ね9分台のところを11分半もかけているのはちょっと遅すぎるように思う。(このくらいはモダンではザラのようだが。)
- Junghänel/Cantus Cölln(HMF<2003>)[OVPP]
発売当時、彼らのモテット集の出来からして非常に期待していたのだが、期待が高すぎたせいかちょっと失望したことを覚えている。Rifkin盤とは対照的に各人が結構ドラマチックな歌い方をしているが、ちょっと張り切りすぎの感あり。特にソロは(力量以上のものを見せよう(?)として)歌い方がやや芝居がかっている感じがする。ただ後半はそれほど悪くない。
- Kuijken/La Petite Bande(Challenge Classics<2008>)[OVPP]
印象は前回記事で書いた通り。合唱、ソロともに良く、今回聴き比べてみたが、やはりこれまでの中で最高点と言えそう。
- Butt/Dunedin Consort & Players (LINN<2009>) [OVPP] (2010/6/22追加)
こちらの記事を参照。
- Herreweghe/Collegium Vocale Gent (PHI<2011>)(2012/8/12追加)
こちらの記事を参照。
一言でまとめると、非OVPP盤に関しては合唱のHelgelbrock、ソロのLeonhardt、総合のHerreweghe新盤ということになりそう。OVPPでは文句なしに今度のKuijken盤である。そしてOVPP好きの私としては上にも書いた通りしばらくは今度のKuijken盤が一番好きな盤になりそうである。ちなみにOVPPでまだロ短調ミサを録音していない団体というと、Milnes/Montreal Baroque、Pierlot/Ricercar Consortあたりが思いつく。彼らにも今後期待したい。