室内楽伴奏によるBeethovenピアノ協奏曲第3&4番

Heidrun Holtmann

また風邪をひいてしまい少し間が空いてしまいました。

以前にも書いたように私は一般に楽曲の演奏は編成が小さいほど好きで、そのため交響曲の弦楽五重奏版だとか、同じくピアノ三重奏版だとか、ピアノ協奏曲の伴奏を室内楽で行ったものとか、そういうものを見るとつい手が出てしまうのですが、今回のはBeethovenのピアノ協奏曲第3&4番のオケ部を弦楽五重奏で演奏したというもの。編曲者は不詳ですがBeethovenと同時代のものだそうです。演奏はピアノがHeidrun Holtmann(ハイドルン・ホルツマン)、バックがConcertino Munchen(コンチェルティーノ・ミュンヘン)となっています。

バックが弦楽五重奏ということでピアノ六重奏曲(?)のような趣になるのかなとも思ったのですが、そこはそれ、もともと曲が協奏曲の書法で書かれているせいかやっぱり感じはピアノ協奏曲ですね。原曲から大きな変化(たとえば交響曲室内楽とかピアノで演奏するときのような)はありません。これは聴いていてさほど違和感がないとも言えますが、逆に言うと思ったより新しい発見というか驚きみたいなものも少ないかもしれません。もっともこれは私が今までピアノ協奏曲では主にソロを聴いていてオケパートにはあまり思い入れがないこともあると思いますが。

むしろ興味深かったのは4番のピアノパートで、特に第1楽章では原曲と違った部分が結構あります。なんでもこの編曲がされたのが、原曲の初演である1807年と曲が出版された1808年の間であり、Beethoven自身がこのように弾いた可能性が高いとのこと(その後の推敲で現在の版となった?)。そのピアノパートの違いですが、全体的には現行版の方が(冗長?なパッセージが省略されて)シンプルになっている感があって、個人的には残しておいてもよかったのでは、というところもあります(もちろん現行版の方が断然魅力的だと思うところもありますが)。(RachmaninovソナタやLisztのエチュードなどに見られるように、作曲家は推敲するほどに余分な部分を削ぎ落としてシンプルになっていく共通の傾向が割とあるのかも。)

なお演奏の方ですが、Holtmannのピアノは、細かなニュアンスは少な目ですが変にナヨナヨせず、速めのテンポでキビキビと小気味よく進むのが気持ちよいです。一方のバックはヴィブラートのかけ方など昔ながら(?)のモダン奏法で、私は今はこの時代の室内楽曲は時代奏法でないと受け付けない体になっているのか(笑)ちょっと違和感がありますが、これはまあ仕方ないでしょう。