William WolframのDonizetti/Lisztオペラ編曲集

William Wolfram [8.570137]

NaxosのLisztピアノ作品全集のVol.27はVol.25と同様、オペラ編曲集で、今回はDonizettiによるもの。曲は収録順に「ルチア」と「パリジーナ」の2主題による演奏会用ワルツS214-3、「ルクレツィア・ボルジア」の回想(第2版)S400、「ランメルモールのルチア」の回想S397&葬送行進曲とカヴァティーナS398、「ファヴォリータ」より面影わが夢うつつにS400a、「ドム・セバスチャン」の葬送行進曲S402。演奏はWilliam Wolfram(ウィリアム・ウォルフラム)で、彼はVol.20のエチュード集(12の練習曲ほか)でも弾いていました。

WolframはVol.20を聴いたときはそれほど強く印象に残らなかったので、実は今回もそれほど期待してなかったのですがこれが大間違い。全体的に素晴らしい出来です。まず私の好きなランメルモールのルチアの回想ですが、俊敏な指回り、輝かしい音、颯爽としたテンポ、いずれも正統的というか王道を行くような演奏で、これまでの手持ちCDの中でもベストと言えそうです。強いて言えば前半部分の歌と伴奏音型がもう少し明確に分離されていると完璧なのですが、でも上出来でしょう。そして今回最大の収穫だったのが「ルクレツィア・ボルジア」の回想。実はこの曲は多分初めて聴く(というか以前聴いたことがあったとしても覚えていない)のですが、こういう面白い曲を今まで聴き逃していたとは不覚です。(そもそも全集嫌いで体系的に聴くということないのでこういうことはよくあるのですが。)第1部と第2部を合わせて23分という大曲なのですが、リストらしい技巧的で華やかな(≒おバカな)パッセージがふんだんに盛り込まれいて、特に第1部はノルマの回想やドン・ジョヴァンニの回想に匹敵する名曲ではないかと思ったくらい(言い過ぎ?)。そんな風に思うのも当然演奏が良いからで、Wolframの演奏はまことに間然するところがなく、鮮やかな指捌きは胸がすくといった感じです。また録音が優秀なのか音が非常にクリアで輝きがあるのも魅力。

NaxosのこのLisztシリーズはこのところ良い仕事をしている、と以前も書きましたが、今回の1枚はその中で特に優れたものだと言えそうです。