Vol.1, Vol.2に続くPaul Lewis(ポール・ルイス)のBeethovenピアノソナタ集のVol.3。今回も3枚組で、収録曲は第1,2,3,4,12,13,14,22,23番の9曲。これで全32曲のうち22曲までが録音されたことになります。ちなみに残りの10曲はVol.4としてやはり3枚組で来年春にリリースされる予定だそうです。
今回でVol.3ということで彼の演奏の傾向はだいたい掴めていて、そういう意味では全体的には予想(期待)通りの演奏なんですが、結構期待以上の曲もありました。まず私の好きな4番。溌剌というよりはやはり丁寧で落ち着いた演奏で私の理想系とはちょっと違うところもあるのですが、それでも細部までよく推敲された読みの深さには非常に説得力があり、手持ちの4番の中でもかなり好位置を占めそうです。そして22番。この曲は(2000年の浜コン1次でのCherepanovの演奏がきっかけとなって)最近特にお気に入りの曲なのですが、やはりしみじみとしたテンポが味わい深く、今まで聴いた中でもかなり印象に残るもの。第2楽章などは指の運動のごとくに速さを競うような演奏も結構あるですが、彼のはかなりゆったり目で、その分細かいニュアンスに富んでいて、また新たな曲の魅力を教えてくれました。全体的に彼の特長は緩やかな楽章に現れているように思っていて、Vol.2の11番や29番でも感じたことですが、あまり感傷的になったり沈滞し過ぎることがなく、表情を湛えつつもロジカルに前に進む意志が感じられるところが好きです。CD1の1,2,3番も好演。ただ個人的には2番の第3楽章や3番の終楽章はもう少しテンポを速く生き生きとしたところが欲しかったかな。
ちなみに熱情第1楽章で主題のff部分(第17,20,22小節)をあまりガンガン弾かないところが、かつて師事したBrendelの演奏に似ているところがあって、やはり影響を受けているのかなと思わせるものがありました。