Giovanni BellucciのBerlioz/Liszt幻想交響曲

Giovanni Bellucci

以前から本人の公式サイトには情報が載っていたGiovanni Bellucci(ジョヴァンニ・ベルッチ)のBerlioz/Liszt幻想交響曲ですが以前のエントリで書いたようにDeccaから一般リリースされ、私も早速購入しました。

Berlioz/Lisztの幻想交響曲は非常に好きな曲で(この間の浜コンでもCherepanovが最後の2楽章を弾くというので楽しみにしていたら、結局最大の見せ場である終楽章は弾かずじまい、というのはここに書いた通り)、新しい録音を見つけたらなるべく買うようにしているのですが、そもそも録音が少なく(手元にあるのはこれくらい)、演奏についても今ところ十分に満足できるものがない状態なのでBellucciの演奏にはかなり期待していたのですが、一方、以前のLisztピアノ協奏曲のエントリで指摘したように、最近は技巧のキレにもやや翳りが見られるようで、正直やや不安もあるところです。

ということで聴いてみたのですが、残念ながらどちらかというと不安の方が的中してしまったみたいです。音楽的には、Lisztピアノ協奏曲のCDに入っていたイゾルデの愛の死で感じたように抒情的で音の出し方や響かせ方をよく考えていることが伝わってきますし、特に多声的な表現が巧みで、第1楽章の序奏や終楽章での鐘の音の表現には非常に感心するものがあるのですが、メカニックのキレの面では、ノルマの回想などが入ったLisztパラフレーズ集で見せたような冴えがあまり感じられず、特にアクロバティックな動きの多い終楽章では、技術的な苦しさからくるのかテンポがかなり揺れるのが気になるところです。(個人的には、こういうトランスクリプション系の編曲では原曲のように一定のテンポをキープして欲しいところです。)タッチの面でも以前の彼からすると洗練さというか滑らかさがもう一つのような気がして、1つ1つの音にこだわるあまり全体の流れのスムーズさが犠牲になっているような印象を受けます。

というわけで、今回も満足いく演奏とはなりませんでした。今後この曲の理想的な演奏を聴く機会は果たしてあるでしょうか…(自分で打ち込むしかないのかも…)。