前回も触れたようにルール・ピアノフェスティバルのVol.13(2枚組)はSeverin von Eckaradstein(セヴェリン・フォン・エッカードシュタイン)特集。それだけでも期待させるのですが、さらにCD1はHummel編曲による室内楽版(Vn, Vc, Fl, Pf)のMozartピアノ協奏曲第24,25番という面白いプログラムになっています。Hummel編曲版は確か白神典子がBISから何枚か出していたと思いますが、私は未聴でHummel版を聴くのは今回が初めて。24,25番はMozartのピアノ協奏曲でも私の好きな3本の指に入る曲(残り1つは27番)というのも嬉しいところです。
最初に25番が入っているのでそちらから聴き始めたのですが、冒頭(原曲ではオケの全奏のところ)でいきなりピアノがガン!と弾き始めたのでビックリ。てっきり以前ここでもとりあげた室内楽版のBeethovenのピアノ協奏曲のように、単にオケパートが室内楽に変わったものかと思っていたのですが、今回はピアノがほぼ全編に渡って活躍していて、そういう意味では、ピアノ四重奏曲のように本当に「室内楽」している編曲といえそうです。(やはりピアノが主役で管弦は脇役という感じはしますが。)
演奏の方ですが、まず25番は速めのテンポで元気ハツラツという感じ。Eckardsteinのピアノは明朗快活、指回りやタッチも実に安定して、特に第1楽章のカデンツァや終楽章は小気味よいというか、胸がすくと言ってもいいくらいです。ただ(テンポが速めなせいもあると思いますが)もう少しじっくり聴かせるような、コクのようなものがあってもよいかなという気はします。一方の24番はテンポも落ち着いて、タッチにも情感がこもってきて良さげです。ただこちらはHummelの編曲が、原曲のピアノパートに装飾音などいろいろ手を加えるのが目立って正直それがウザいと思うところもありまず。そのような華麗なパッセージが面白いと思うこともあるので一長一短なんですが…。
いずれにしてもこの2曲でのEckardsteinの演奏は完成度が高くさすがという感じで、もう一枚のソロリサイタルの方も(これから聴くのですが)大いに期待できそうです。