NAXOSのLisztピアノ作品全集のVol.26は2台ピアノ向けということで、ダンテソナタ(ダンテを読んで)とダンテ交響曲というダンテがらみの2曲の2台ピアノ編曲版。ダンテソナタの2台ピアノ版があるとは知らなかった、と思ったら編曲したのは演奏者の一人のVittorio Bresciani(ヴィットリーオ・ブレッシャーニ)とのこと。もう一人の奏者はMarco Poloへの一連のThalberg作品の録音で知られるFrancesco Nicolosi(フランチェスコ・ニコロージ)で、このコンビ(Franz Liszt Piano Duo)はファウスト交響曲の2台ピアノ版も過去にNuova Eraから出していました。ダンテ交響曲の方はLiszt自身による編曲。
ダンテソナタはとても好きな曲ということもあって、今回は特にそちらに興味津々だったのですが、正直いま一つでしたかね。そもそも元々ピアノソロのために作られた曲を2台ピアノに編曲するのは、オケ曲を2台ピアノに編曲するのに比べ、(聴かせるという意味で)なかなか難しいものがあるというのは、これまでの経験から重々予想できたのですが、それにしてもあまりピリっとしません。曲の構成(小節数)はソロ版とほとんど同じで、2台ピアノになった分、音を厚くしたり、一方にトレモロで持続音を弾かせたり、たまにLisztっぽいピアニスティックなパッセージを追加したり、といった変更をしているわけですが、音が増えた分、主に急速部分での機動性も幾分失われているようで、特に終盤のコーダの、オリジナル盤であれば加速がかかって盛り上げるところが、テンポが上がらずどうにも締まらない感じです。個人的にはせめて技巧的なパッセージの追加を各所でもっと派手にやってくれたらもうちょっと面白くなったかもしれないのにという気がします。(緩徐部分はそういった音の追加が割と成功していると思いましたが。)もう1曲のダンテ交響曲の方は、実は(管弦楽版を含めて)あまり聴いたことがないのですが、こちらの方がまだ楽しめる感じです(特に第1楽章)。ただ終楽章(マニフィカト)は児童合唱の方がメインといった風で、ちょっと私の趣味ではなかったかな。
演奏の方なんですが、ダンテソナタの印象が強いせいもあってか、全体的に堅実ではあるけどちょっと華に欠ける感じです。Brescianiの方はDynamicsへのLisztの録音もそんな雰囲気があったのでまあわかるのですが、Nicolosiの方はThalbergで見せたテクニシャンぶりがあまり発揮されていないようで、堅実な方へ引き寄せられたのかもしれません。