Pieter WispelweyのDvorakチェロ協奏曲

Pieter Wispelwey [CCS SA 25807]

Pieter Wispelwey(ピーター・ウィスペルウェイ)が私の好きなチェリストであることはこのブログでも何回か書いていますが、その彼によるDovorakのチェロ協奏曲の11年ぶりの再録音。オケはIvan Fischer指揮のブダペスト祝祭管弦楽団で、併録は交響的変奏曲。ライヴ録音です。

彼の旧盤も当然聴いているのですが、実はあまり気に入ってなくて、というのも全体的に軽量級というかアッサリ薄味で、個人的にはもう少しチェロ特有の「泣かせる」ような歌い回しとか、力感とか、コクのある表現が欲しかったところです。(もっともこの曲は最初に聴いたFournier/Szell盤が刷り込みというか呪縛になっている面はあると思いますが。)ただ同じように旧盤はもう一つと思っていたBeethovenのチェロソナタでも、Lazicと組んだ新盤は素晴らしい出来だったということもあり、その要因として史上最高額で落札したと言われるGuadagniniによるところも大きいのでは思っているので、その点でも今回のDvorakも期待できるのではと思って聴いてみました。

果たしてその期待は概ね叶えられたと言ってよいでしょう。必ずしも100%満足とまでいかないところもあるし、Fournier盤の呪縛を完全に断ち切ったとまでは言えないかもしれませんが、少なくとも旧盤であったような素っ気無さはなくなり、すべてのフレーズが細かい表情に満ちていて、しかもGuadagniniの美音はまさに期待通り。第1楽章の第2主題や展開部の最初の緩徐的な部分などはグッとテンポを落としたりして、少々情感を込め過ぎなのではと思うほどですが、変にもったいぶったような感じはありません。特によいのは時代奏法的なアプローチを取り入れていることで、もちろんノンヴィブラートというわけではないですが、少なくとも(Fournierのように)音の頭からのべつまくなしにヴィブラートという弾き方をしていないのは私好みです。逆にやや注文を付けたいと思うのは主にオケで、まず動きが少しモッサリした感じで、もう少しキビキビとした反応の良さが欲しいところ。またソロとのバランスの点でやや音が大きすぎる感じで、強奏のところなどちょっと煩いというか大げさに感じられなくもないです。ソロに関してはもう少し剛毅なところがあってもよいかなというところでしょうか。いずれにしても今後もこのGuadagniniで録音を増やしていって欲しいところです。