ルール・ピアノフェスティバルVol.11(その1)

Klavier-Festival Ruhr

Vol.9(編曲集)Vol.1-8(10枚組)が予想以上によかったので、(以前ちょっと言ったように)調子に乗ってVol.11を買ってみました。Vol.11は2004-2006年の演奏を収録した5枚組。うち4枚は一人の演奏者で1枚という配分になっています。今回はその中でCD3〜5に入っているStefanovich, Gerstein, Tokarevの演奏の感想を。(間違えてCD3から聴き始めてしまったので(笑)。)

前回の10枚組ではその年の選りすぐり(?)の演奏が1枚に収められているのに対し、今回は3年分で5枚、しかも2005年の編曲物は別にVol.9になっているということで、さすがに中身が薄まった(?)というか、前回ほど強く印象に残る演奏は少ないという感じです。その中で存在感があるのはやはりVol.9でも光っていたNikolai Tokarev(ニコライ・トカレフ)。J.S.Bach/Busoniの前奏曲とフーガBWV532(Busoni編曲物の中で私の一番好きな曲)は堂々たるものですし、BrahmsのHaendelの主題による変奏曲とフーガも快活で若々しさが溢れる演奏。Schubert/Lisztの4つの歌曲の中では魔王が特に印象に残ります。テンポの速さはこれまで聴いた中で多分一番ですし、その後もTokarev節と言ってよいような個性的な解釈(爆演?)が随所に見られます。

Vol.9の編曲集では大いに見直したKirill Gerstein(キリル・ゲルシュテイン)は、Beethovenのソナタ第4番とSchubert即興曲集D899、Rachmaninovコレルリ変奏曲の3曲で、いずれも佳演とは言えるのですが、特に印象に残るというほどでもないのが正直なところ。もう一人のTamara Stefanovich(タマラ・ステファノヴィッチ)は、最初のJ.S.BachのBWV989あたりは悪くないのですが、Mozartのデュポールの主題による変奏曲はいかにもロココ的であまり私の趣味に合わず。そしてメインはRachmaninovエチュードとLigetiのエチュードを交互に並べるという趣向なんですが、(Ligetiはそれほど聴き込んでいない曲なのでともかく)Rachmaninovは明らかに技術的に精彩を欠いている感じです。