ルール・ピアノフェスティバルVol.11(その2)

Klavier-Festival Ruhr

前回の続きで今回はCD1,2の感想。

CD1は2005年の、4人のピアニストの演奏を集めたものですが、この中で印象に残ったのはChu-Fang Huang(ホワン・チューファン)によるRavelのラ・ヴァルス。タッチに張りと勢いがあって、音を「置き」にいくというか、守りに入るような姿勢がないのが魅力です。ときに聴き慣れない音が鳴ったり、多少強引なところはありますが、少なくとも聴き手を退屈させない演奏と言えるでしょう。そのHuangとBenjamin Hochman(ベンジャミン・ホックマン)の連弾によるSchubertの創作主題による変奏曲D813も、二人の息がピッタリ合ってよい演奏だとは思うのですが、いかんせん曲自体の魅力が…(聴き慣れない曲なのでそう思うのかもしれませんが)。Claude Frank(クロード・フランク)によるSchubertソナタD960は、これもあまり私の得意な曲ではないのですが、どこか表現の踏み込みが浅い感じがして、あまり印象に残りません。終盤はちょっと疲れが出たのかミスも目立ちます。

一方CD2は同じく2005年のTim Horton(ティム・ホートン)の演奏集ですが、これは全体的に低調。最初のSchumannアレグロOp.8はそれほど悪くない感じ(と言ってもこの曲はあまり詳しくない)ですが、SchubertソナタD784は、こぢんまりと控えめな表現に終始している感じで、自然な動きというか勢いのようなものが感じられません。Schubertピアノ曲はことさらにスケールを求める曲ではないにしても、物足りなさが残ります。Schoenbergの5つの小品Op.23は苦手なのでコメントできませんが、最後のRavelの鏡は前回のStefanovichのRachmaninov並に冴えない演奏。特に道化師など、同音連打がちゃんと鳴っていなかったりします。

というわけで、前回と合わせると、一部例外はありますが全体的にこのVol.11はVol.9, Vol.1-8ほどの充実感はない感じです。もう1セット、Vol.13も買ってあるのですが、こちらはあのEckardsteinの演奏を集めているということで期待です。