AngelichのLiszt巡礼の年全曲

Nicholas Angelich

一昨年にリリースされたNicholas Angelich(ニコラス・アンゲリッチ)によるLisztの巡礼の年全曲(3枚組)は、気になる存在でありつつも、値が張るということでこれまで購入は保留していた(分売だったらとりあえず第2年イタリアあたりで味見するところなんですが)のですが、とあるブログのレビューを見ていたらこの盤が絶賛されていたので、思い切って買ってみました。

実は保留していたもう一つの理由として、巡礼の年は曲集としては必ずしも好きではないというのがあって、もちろんダンテとかタランテラとか泉のほとりでとか、好きな曲もいろいろあるのですが(特にダンテはLisztの中でも五指に入る好きな曲)、第3年なんかはエステ荘の噴水以外はまだピンとこないところもあって、要するにあまり感度の高くない曲も結構あるのですが、それでも私のわかる範囲で言うと、やや期待ハズレかな、というところです。一番気になるダンテソナタについて言えば、スケール感というか畳み掛けるような迫力やダイナミズムの点でやや不満があります。またアゴーギクに関して、ちょっとギクシャクしている(サイドブレーキを引いたままアクセルを踏んだような感じ)ように感じられるところもありました。またこの曲に限らず緩徐部分ではかなり遅めのテンポをとるんですが、そのテンポに見合うだけの音楽的な充実感に欠けるというか、単調でやや退屈に感じられます。ちなみにそのブログでは技巧の面でも素晴らしいみたいなことも書いてあったのですが、個人的には特筆するほどではない気がしました。またAngelichといえば音や響きの美しさが結構武器になっているはずなのですが、録音のせいなのか全体的に音はもうひとつパッとしない感じです。

というわけで、人によって好みというか感想は大きく違うものだという、当たり前と言えば当たり前の結論になってしまいました(^^;)。