DemidenkoのBeethovenディアベリ変奏曲ほか

Nikolai Demidenko

またまたDemidenkoネタで、今回はBeethovenのディアベリ変奏曲とソナタ第24番が入った一枚(新譜)。実を言うと今回のCDは買おうかどうか少し迷って、というのも私はディアベリ変奏曲がそれほど好きではないのと、DemidenkoのBeethovenは以前AGPLから6番と29番(Hammerklavier)がカップリングされたものを聴いているのですが、正直期待したほどではなかったというのがあります。(あと値段がやや高めというのも。)でもまあDemidenko好きを自認する私としては一応聴いておかねば、ということで。

まず24番の方ですが、非常にリリカルな、ある意味Demidenkoらしい演奏。柔らかく繊細なタッチで、特に第1楽章はためらうような、あるいはふと立ち止まるようなアゴーギクも多用して、とことん慈しむような弾き方です。ただちょっとやり過ぎというか、ナヨっとした感じがして、個人的にはもう少しシャキっとしていた方が好きです。でも(Gouldほどではありませんが)彼の個性が現れていて、その意味では存在意義があるかもしれません。

一方メインのディアベリの方は、上にも書いたようにそれほど好きな曲でなく、解釈に対する感度もあまり高くないのですが、24番ほどは耽美的でもなく、(やはり詩情的な演奏とは思いますが)想定の範囲内(古っ!)かなという気がします。ちなみに個人的にこの曲の演奏で気に入っているのはMustonen盤で、速めのテンポにエッジの効いたタッチ、躍動感のあるキビキビとしたリズムと、初めて「この曲面白いかも」と思わせてくれた演奏です(やはりBeethovenはリズムが命ですね)。Demidenko盤にはまたそれと違った魅力を教えてもらうことを期待していたのですが、残念ながらそこまでは至らなかったかな。と言ってもこれは私の感受性の問題だと思いますが。