DuchableのLisztピアノ曲集

Francois-Rene Duchable

Francois-Rene Duchable(フランソワ=ルネ・デュシャーブル)の、これまで持っていなかったLisztのピアノ曲集のCDが廉価盤で再発されていたのでこの機に買ってみました。曲は、葬送、コンソレーション第3番、エステ荘の噴水、バラード第2番、メフィストワルツ、愛の夢第3番、ラ・カンパネラ等々。DuchableのLisztなら初出のときに買っていそうなものなのになぜだろ?とも思ったのですが、曲を見ると確かに(やや通俗的で)フルプライスだと手が伸びにくかったのかも。また何曲かは'70年代に録音されたEMI盤にも含まれています。(ちなみに今回のは'96年録音。)

Duchableは'90年代にLisztのオペラ編曲集や超絶技巧練習曲集をEMIに録音していてそちらは結構気に入っているのですが、それらに比べると今回のCDはやはりもうひとつというところです。Duchableというと、速めのテンポ、歯切れのよいタッチ、ルバート等のアゴーギクをあまりつけずにキビキビと進む、といったあたりが特徴で、それが先ほどの編曲集や超絶のCDでも最大の魅力になっていたと思うのですが、今回のCDではその面白さが十分に出ていないかな、という気がします。もちろんバラード第2番のAllogro deciso.になってからの速いテンポやメフィストワルツの終盤でのスピード感など、らしさはあるのですが、全体的にはまだ常識の範囲内というか、突き抜けた感じが足りないのかもしれません。もともと詩情とか歌心とか繊細さとか、そういうところで勝負するタイプではないだけに、今回のように技巧がメインの曲でない場合はややストレート過ぎてコクが出ない面もあるでしょう。

ちなみに'70年代の録音との比較で言うと、たとえばメフィメストワルツでは基本的な解釈は変わっていないのですが、技術的にも音楽的にも今回の方がこなれているれている感じです。