Petrov他によるBrahms変奏曲集

Nikolai Petrov

また前回に引き続いてNikolai Petrov(ニコライ・ペトロフ)の中古CDで、今回はBrahmsの変奏曲集。中身はPaganiniの主題による変奏曲Op.35、Schumanの主題による変奏曲Op.9、Handelの主題による変奏曲とフーガOp.24の3つですが、ただPetrovが弾いているのはPaganiniのみで、SchumanはValery Kastelsky、HandelはViktoria Postnikovaによる演奏です。

当然のことながらPetrovによるPaganini変奏曲目当てで買ったのですが、出来の方は正直言ってイマイチ、というか期待の高さから言うとイマニくらいでしょうか。出だしのテーマはパリっとしてなかなか良さげだったのですが、第1変奏がモッサリしたテンポでガクっ。その後も彼らしい技巧のキレ、あるいは豪快さといったものはあまり感じられず、また録音も例によって古めかしく乾いた音で、和音等での響きの美しさの点でもいまひとつ。これまで彼のこの曲の録音があまり人口に膾炙していなかった(というか私はネットショップで見るまでこのCDの存在を知らなかったのですが)理由もわかるような気がします。

その代わり、と言っては何ですが、他の2つの曲の演奏はなかなか良いです。Op.9の方は実はこれまであまり真面目に聴いたことがなかったのですが(^^;)、Kastelskyの演奏はゆったりとしたテンポで音をよく吟味しており、響きの美しさやしみじみとした歌で聴かせるものがあります。(こちらはPetrovと違って潤いのある録音。)ダイナミックスやテンポのメリハリがさらにあるとよいと思いましたが、少なくともこの曲に興味を抱かせる演奏でした。PostnikovaのOp.24も(以前も言いましたが私はこの曲がそれほど好きではないのですが)やはり繊細でニュアンスに富んだ演奏で、私がこれまでこの曲に対して持っていた明るく元気な(悪く言えば能天気な)イメージを良い意味で覆すような新鮮な印象を与えてくれました。今後この曲を聴きたくなったらまずこの演奏を取り出すかもしれません。

ともかく、Petrovほどの技巧の持ち主であっても曲の向き不向きはあるわけで、改めてすべての曲を上手く弾くというのは難しいことだと感じます。