ルール・ピアノフェスティバル1997-2004(その2)

Klavier-Festival Ruhr

前回エントリの続きで、CD4,5を聴き終えたのでその感想を。ちなみに今回も先入観なく聴けるように事前に演奏者名を見ないようにして聴いています。(普通のCDでもそうできるとよいのですが。)

CD4(2000年)で特に印象に残ったのはMatthias Kirschnereit(マティアス・キルシュネライト)。ほとんど知らないピアニストなんですが、Rachmaninov前奏曲Op.32-12での細かい音型のクリアさや指回りの良さは瞠目に値しますし、続くBrahmsのワルツOp.39-15はセンスを感じる歌い方。そしてWeberの舞踏への勧誘も完成度の高い正統派的演奏で、この曲は最近は(特にTausig編でないものは)弾かれることが少なく録音もあまりないので、個人的なリファレンス盤にしてもよいかも。逆に悪い意味で印象に残ったのがCedric Tiberghien(セドリック・ティベルギアン)。HaydnのHob.XVI-50のソナタはテンポが遅めな上に妙にもったいぶった解釈で、それでいてときどきテンポが走ってしまうような不安定さを感じさせるもの。どうしてこの演奏がこのハイライトCDに収録されたのか正直理解できません。Beethovenのエロイカ変奏曲も同様で指回りがもうひとつピリっとしません。(彼はHMFからBeethovenの変奏曲集を出していて、買おうかと迷ったこともあったのですが、買わなくて正解だったかも。)CD4はこのTiberghienの演奏がメインになっているためか、全体的にはややイマイチの印象があります。ちなみに最後に入っているWolfgang Daunerの曲はちょっとイージーリスニングっぽい感じ(George Winston風?)で、やや場違いな雰囲気があります。

CD5(2001年)は逆に、渋めの曲が多いためか強いインパクトのある演奏はなかったのですが、全体的な質の高さではこれまでで一番かもしれません。LuganskyのMendelssohn無言歌Op.67-2は、Luganskyってこんなに歌心があったっけ?と思わせますし、EngererとBerezovskyの連弾によるBrahmasの18のワルツ(からの10曲)も非常設デュオとは思えない息の合った演奏。Allessio BaxはScriaibnの前奏曲での透明感のある響きがよいですし、Bartokの舞踏組曲もバーバリスティックな面よりは古典美を感じさせる演奏ですが悪くありません。ただLisztのハンガリー狂詩曲第6番は、ラッサンでのラプソディックな雰囲気はよいのですがフリスカは精度とスピード感の点でもう一歩だったかも(聴衆は大ウケのようでしたが)。そしてCD5で個人的に一番気に入ったのはJasminka Stancul(ジャスミンカ・スタンチュール)のBrahmsラプソディー第1番。これも多分初めて聴くピアニストで、かつ曲自体もそれほど好きというわけでもないのですが、音が深々として充実していますし、アゴーギクなど表情の付け方も非常に説得力があって、これまた個人的なリファレンス盤となりそうです。(そもそもこの曲の録音をあまり持っていませんが…^^;)