MardirossianのBach編曲集

Vahan Mardirossian

Vahan Mardirossian(ヴァハン・マルディロシアン)のJ.S.Bach編曲作品集は、以前店頭で見かけて迷った挙句に踏み切れなくて(値段も結構高い)そのままにしておいたものですが、今月のレコ芸の月評を見たら(と言っても立ち読みですが^^;)絶賛とまでは言わないまでもかなりの高評価で、月評がアテにならないのは重々承知ですが、気になっていたCDだったし、一応ディアパソンの5つ音叉も貰っているみたいなので思い切って買ってみました。曲はLiszt編の幻想曲とフーガBWV542、Rachmaninov編の無伴奏パルティータ3番からの3曲、Marcello/J.S.Bachの協奏曲BWV974、Busoni編のシャコンヌ、オルガンコラール3曲他です。2003年のライヴ録音。

感想なんですが、正直イマイチでした。ややオン気味な録音のせいかもしれませんが、全体的にタッチがあまり洗練されていないというか、硬くてどこか心許ない感じです。最初の幻想曲とフーガ(のフーガ)は相当のテクニシャンでなければ(私にとって)納得いく演奏は難しい難曲なのでまあ仕方ないかとも思ったのですが、その他の曲もトリルが上手くキマってなかったり、音が多少ゴツゴツしていたり(よく言えば素朴なんですが)と、もう一つ基本的なところで私の好みとは違うようです。ただRachmaninov編は意外にいい感じで、どちらかというと彼の果敢な表現意欲に指のコントロールがついていっていないのかもしれません。

ちなみにライナーの経歴を見ると「多くのコンクールの受賞歴」とありますが、この記述だけで具体的なコンクールの名前がなく、私のこれまでの経験からするとこういうのは(結構あるのですが)怪しい傾向です。現代はコンクールも乱立気味で賛否両論もあるのですが、やはりピアニストとしての基本的なテクニックを見極める上でコンクールというのは一つの試金石となるものでしょう。(もちろん、KissinやAndsnesなどのように飛び抜けた才能があればコンクール無しでもやっていけるでしょうが。)

というわけで、今回もまたレコ芸にしてやられました(笑)。最初にCDを見つけたときに保留していたのは実は正しかったのだということで、そのあたりの直観というか眼力もついてきたのだなと自分を慰めています(笑)。