SayのBeethovenピアノソナタ集

Fazil Say

実のところ横山幸雄の全集もまだ全部聴き終わってないのに(^^;)、またBeethovenのソナタ集を買ってしまいました。Fazil Say(ファジル・サイ)による「熱情」「ワルトシュタイン」「テンペスト」という有名どころを集めた1枚です。

Sayと言えば、私にとって一番インパクトがあったのはやっぱりデビュー盤のMozartです。その頃の私は既にMozartといえば時代楽器の方を好んでいたのですが、例によって店内の試聴機で何の気なしに聴いてみてその溌剌とした音楽に思わず購入してしまいました。そのときはもちろん彼の名前は聞いたことがなかった(ちなみに当時は「セイ」かと思ってました(笑))のですが、実はフランスではこの盤が話題になっていたと後で聞いて、妙に納得したものです。ただ、彼は個人的にはこのMoazrtがベストで、その後に出したBachやTchaikovsky、Lisztなどはそれほどグッと来るものがなかった(Stravinskyは例外ですが)というのも正直なところです。今度のBeethovenも期待半分、不安半分というところで聴いたのですが…。

やはりMozartほどの説得力はなかったかなというのが正直なところです。彼らしく随所に面白いアイディアが込められた演奏なのですが、なんとなく騒々しいというか慌しい印象を受けます。(その意味では落ち着き払ったP.Lewis盤とは対照的です。)ひとつには(速めのテンポ設定もありますが)フレーズとフレーズの切れ目の間をあまり撮らないで、先へ先へと進む傾向が強いことがあるように思います。また音色をよく吟味している感じがあまりせず、このあたりは同じ個性派でもPletnevあたりとの違いかなと思います。一言で言うと「ノリが命」というところでしょうか。そういう意味ではサッパリとした緩徐楽章の方が面白く聴けました。あとワルトシュタインの終楽章ではトリルの部分など技術的にもやや?なところも見受けられたのは残念です。

それでも熱情やテンペストの終楽章での疾走ぶりは、変に守りに入った優等生的演奏よりはずっと彼らしいと言えるでしょう。(熱情コーダでややブレーキがかかったのは残念ですが。)