Robert LevinのMozartクラヴィーアソナタ集Vol.1

Robert Levin

今年はMozartイヤーということでこれでもかというくらい新譜が出ているのですが、今度またRobert Levin(ロバート・レヴィン)のフォルテピアノによるクラヴィーアソナタ集(第1〜3番)がリリースされて、今年は既にTilneyOortRampe盤を買っていてもうお腹いっぱいという感じもしているのですが、私の好きな第3番(K281)が入っている(Beethovenでの4番と同じく私の味見用の曲になっています)のと、 レーベル提供の宣伝文での、彼独自の演奏研究結果に基づいている(曰く、「"Dolce"は強弱記号として使用」とか「曲の冒頭に強弱記号が無い場合は、フォルテで始める」とか)、というのがちょっと興味を引いたので買ってみました。

聴いてみたところ、全体的にテンポが速めでリズミカル、アクセントが割とはっきりしているため拍節感が明確で、小気味よい印象を受けますが、ウリとなっている新しい演奏研究結果という点に関してはそれほど変わっているという感じはせず、これならばむしろRampe盤あたりの方が大胆だったかなという気がします。ただ2番や3番の終楽章などで、最後に主題に戻る前に(K333の終楽章ほどではありませんが)カデンツァのような即興的なパッセージを挿入するようなことをやっていて、これはちょっと斬新かもしれません。

演奏に関してさらに言えば、軽快でスポーティーなんですが、個人的にはさらにしっとり感とかニュアンス、陰影、激しさなど表現の幅の広さがあったらよかったかなという気がします。要するに少し物足りない感じ。モダンピアノだと楽器の表現力をフルに使うとMozartではやり過ぎになってしまう(Pletnevみたいに)のですが、時代楽器ならそのあたりあまりセーブをしなくても楽器の制約からちょうどよいところに落ち着いてくれるのが利点ではないかと思っています。(ちなみにボーナスDVDでは彼が解説をしながら断片的にちょこちょこ弾いているのですが、そのときの方がコントラストがより大胆で、CDではやや大人しくなっている気がします。)

というわけで結論的には続編が出たら買うかどうかは微妙。演奏時間が短め(54:56)なんですが、ボーナスDVDで埋め合わせているのかもしれません。