Paul LewisのBeethovenピアノソナタ集Vol.2

Paul Lewis

浜コンレポートについては一応区切りがついたので、ブログの方を再開です。

Paul Lewis(ポール・ルイス)によるBeethovenピアノソナタ集のVol.2。全集となる予定なのに前回のVol.1を出してからなかなかVol.2が出ず、ひょっとして売れ行き不振でポシャってしまったのか(結構地味な演奏だったからな…)と危惧していましたが、今回は3枚組になっており、それで間隔が開いたのかと自分なりに納得です。収録曲は8,9,10,11,21,24,25,27,28,29番の10曲。

前回のVol.1のときの印象は「期待に対して80%」ということで、質の高さは認めるものの正直そのあまりに落ち着いた演奏に多少とまどいも感じていたのですが、今回もその路線は同じです。というかむしろ強まっているかも。ただ今回は彼の目指しているものが多少わかってきた気もしています。そもそも私が彼に注目したのはデビュー盤のSchubertピアノソナタ集で、彼の演奏はSchubert特有の歌謡性や幻想性よりも、きちんとしたフォルムというか構築性を重視した、いわばBeethoven的なSchubertであることに惹かれたのですが(だから当時、彼はBeethovenに向いているのではと思った)、Beethovenでは逆にSchubert的なものを狙っているのかなと。

もともと私の嗜好では、Beethovenの演奏は(特にAllegro楽章では)強弱のコントラストが十分にあり、sfやアクセントがはっきりとした、リズムの推進力が感じられる、ピアノでいうとSchenck盤のような、オケで言えばNorringtonのような演奏が好みなのですが、その点からするとLewis盤はあまりガツガツしないというか、それほどメリハリを付けずにテンポも遅め、かといってあまりロマンチック(幻想的、情緒的)にならず、穏やかかつ読みの深い演奏と言えるでしょう。そのあたりが(Lewisの考える)Schubert的な演奏かなと思う所以です。それで成功していると思う曲もあれば、やっぱり違和感のある演奏もあるのですが、長くなってきたので個々の曲の感想については(多分)次回に。