Paul LewisのBeethovenソナタ集Vol.1

Paul Lewis

横山幸雄のBeethovenソナタ全集をまだ聴き終えてないのですが、また別のBeethovenソナタ集の感想を。最近リリースされたPaul Lewis(ポール・ルイス)によるOp.31の3つのソナタです。(これがVol.1で、ゆくゆくは全集になる予定だそうです。)

Paul Lewisはデビュー盤のSchubertソナタ集(D784 & D958)がとても良かったのでそれ以来注目しているピアニストですが、その後出したLisztのソナタは個人的にはそれほど印象に残らず、彼の資質に合っているのはむしろBeethovenではないかと思っていたので、今回の選曲には大納得です。

で、聴いてみての感想ですが、こちらの期待に対して80%くらいというところでしょうか。良い点は、やはりSchubertでも感じた通り、技術的に安定し、細かい強弱など細部までよく推敲されているところです。仕上げが丁寧で、中嶋誠之助風に言えば「いい仕事している」という感じです。テンポは全体的に落ち着いていて、弾き飛ばすようなところは皆無です。
逆にもう一つだと思ったのは、その落ち着き過ぎなところで、場合によっては躍動感や激しさをもう少し出してもよかったのではないかと思います。例えば16番の終楽章はもっと溌剌とした、いたずら小僧のような音楽を期待していたのですが、彼の解釈は少しserious過ぎるのではないかと思いました。この楽章はBeethovenのユーモアがとてもよく現れているのですから。

ともあれ、この調子で行けば質の高い全集になるのではないかと思います。今後も好きな曲が入ったVol.が出たら買ってみたいと思います。(ただそのように虫食いで買っていった場合、後で安い値段で全集が出たときに悩ましいことになりそうです…。)