ルール・ピアノフェスティバルVol.14

Klavier-Festival Ruhr Vol.14

久しぶりにルール・ピアノフェスティバルのCDの感想。Vol.14は3枚組で、詳しい演奏曲目はこことかここに出ています。

CD1はMozart集。目玉はVol.13に続いてEckardsteinの弾く室内楽版のMozartピアノ協奏曲(26番)ですが、相変わらずEckardsteinのピアノは冴えていて、行くとして可ならざるはなしといった感じ。実に爽快です。実は26番はそれほど好きな曲でもなく、今回久しぶりに聴いたのですが、編曲者のJ.N.Hummelによるピアノパートへの技巧的パッセージの加筆と相まってかなり楽しめました。今後26番を聴くときはこの室内楽版を真っ先に取り出すかも。その他の曲は正直もう一つという感じで、その中ではクラリネット三重奏曲でのElena Bashkirovaのピアノがなかなかよいのですが、肝心のクラリネットの音がやや平板で魅力に欠けるのが痛いところです。

CD2は変奏曲集。こちらで印象に残ったのはHerbert Schuchの弾くSchumannのアベッグ変奏曲とNikolai Tokarevの弾くRosenblattのPaganini変奏曲。Schuchはデビュー盤を聴いて以来その才能に目をつけていましたが、今回もセンス(音楽センス&技術センス)の良さに改めて感心しました。(ちなみに今回も事前に演奏者を見ずに聴いているので、予断や先入観は入っていないはずです。)一方のTokarevは同じ曲をSONYへのデビュー盤でスタジオ録音していましたが、今度の方が断然生気に満ちており、なんといってもノリが違います。やはり彼はライヴで真価を発揮するタイプなんでしょう。スタジオ録音は(新人が陥りがちな)いわゆる「借りてきた猫」症候群に罹っていたのでしょうか。他の人&曲はやはり全体的にもう一つで、Guiseppe Andaloroの弾くBeethovenの創作主題による32の変奏曲はそれほど悪くはないのですが、以前のNaxosへの録音の印象からすると、もう一押し欲しいところです。

CD3はボーナスCDで、例によって現代曲集。(最後の1曲はP.Serkinの弾くDowland。)いつものごとく私向きの曲は少なかったのですが、ただMeyer(1943-) 作曲の自動ピアノのための「サン=スーシの思い出」は結構面白かったかな。

というわけで全体としてはそれぞれのCDに印象に残る演奏が1、2あるのですが、打率としては今ひとつですね。実はSchuchはVol.15ではCDまるまる1枚分収録されているのですが、全体が6枚組ということで(打率を考えると)購入をちょっと躊躇しています。