J.S.Bach/Moschelesのチェロパート付き平均律クラヴィーア曲集より10

Ramon Jaffe/Elisaveta Blumina

先日CDショップで試聴して(値段が安めだったこともあって)衝動買いしてしまった一枚。MoschelesがJ.S.Bachの平均律前奏曲のうち10曲にチェロパートを加えてピアノとチェロのための作品に編曲したというモノで、選ばれたのは1巻から1,2,4,6,15,21,24番と、2巻の5,6,7番。演奏はチェロがRamon Jaffe(ラモン・ヤッフェ)、ピアノがElisaveta Blumina(エリザヴェータ・ブルーミナ)。併録(というか本当はどちらかと言うとこちらがメインなのかも)はMoschelesのチェロソナタとなっています。

今回の編曲を聴くとチェロパートの加え方にもいろいろあって、1巻の1番のように、元のピアノパートが単なる伴奏に成り下がって(?)その上でチェロが新たな主旋律を奏でるような感じ(Gounodのアヴェ・マリア型とでもいいましょうか)の曲もあれば、チェロが新たな声部として対等な形で加わるものあって、個人的には後者の方がずっと好みです*1。その代表的なものが2巻の5番で、まるでJ.S.Bach自身が書いたチェロ(ヴィオラ・ダ・ガンバソナタを聴いているかのような充実感があります。(実際、試聴で一番気に入ったのがこの曲。原曲より好きになってしまうかも。)同じく1巻の24番も編曲はとてもよいのですが、ただチェロがビブラートかけまくりのバリバリのモダン奏法なのが個人的にはマイナス。(最近はBachでこういうビブラートを聴くと気持ち悪くなってしまいます(^^;)。)一方ピアノも、チェロを引き立たせることに徹しているというか、要するに大人しくて才気があまり感じられない演奏でこれもやや残念。(本来は互いに自己主張することが相手を引き立たせることになると思うのですが。)というわけで、編曲は良いのでもう少し好みの奏者(たとえばWispelweyとLazicとか)で聴いてみたいところです。

*1:ちなみにピアノパートも原曲そのままではなく、小節が増えるなど結構手が加わっている曲もあります。