Valery KuleshovのLisztアルバム

Valery Kuleshov

Valery Kuleshov(ヴァレリー・クレショフ)の久々の新譜はLisztアルバム。曲はロ短調ソナタとPaganini大練習曲集、そしてBusoni編のメフィストワルト第1番ということなんですが、HMVのページなどには「パガニーニによる超絶技巧練習曲集」となっていて、すわ1838年版かと色めき立ったのですが実際は1851年版(+部分的にブゾーニ版)。またBusoni編のメフィストワルツの2番も入っているように書いてありますがこれも嘘。1番のみです。(他の情報からこれらが間違っているだろうことはわかっていたので特に失望はしなかったのですが、これらを目当てで買おうとしている人は要注意。)

今回一番感激したのはBusoni編のメフィストワルツ。これまでもBusoni編を部分的に取り入れて弾いている盤は結構あったのですが、フルで聴くのは実はこれが初めて。予想以上に面白い編曲でした、というかBusoni版はLisztのピアノ版にさらに手を加えたのではなく、Lisztオリジナルの管弦楽版を元に新たに編曲したものなので、管弦楽版も好きな私にとっては全く違和感なく聴け、むしろLisztもこうすれば…といったところが満載です。フルのBusoni版を弾く人がほとんどいないのが不思議に思われるくらいで、今後もっとこの版を弾く人が増えてくれれば嬉しいところです。

Paganini大練習曲も、ジャケットには第4番のみBusoni版と書かれていますが他の曲も部分的にBusoni版を使用しており、その意味でやはり新録音として意義があるんですが、個人的にはこちらもフルのBusoni版を弾いてくれたらさらに価値が高まったかなというところ。演奏は特に凄みがあるというわけではないですが全体に高レベル。この曲は'93年のCliburnコンクールライヴ盤にも入っていて(ただしそちらは通常の版)、そちら方はライヴ特有の勢いがある分、多少粗い面もあるのですが、今回はスタジオ録音だけあってクールで完成度が高いといった感じ。(が、瑞々しさはライヴの方ですかね。ちなみに他のライヴ盤が国内盤であるのですがそちらは未聴。)ロ短調ソナタも速めのテンポで割とサクサク進み、解釈にもちょっと面白いところがあって印象は悪くないです。コーダのキレもなかなかのものでした。KuleshovはHorowitz編曲をよく弾くということでデビュー時は結構騒がれたように思いますが、それに引きずられて過大な期待をしなければ十分楽しめる盤だと思います。