David FrayのBach&Boulez

David Fray

David Fray(ダヴィド・フレイ)が、J.S.BachとBoulezのピアノ曲カップリングするという、ちょっと興味深そうなCDを出していたので、Boulezだけだとなかなか手を出しにくいところなんですが、Bachもありということで買ってみました。曲はJ.S.Bachの方がパルティータ第4番とフランス組曲第1番、Boulezは12のノタシオン とアンシーズ。ちなみにFrayは以前にLisztのソナタなどを入れたデビュー盤を出しているのですが、彼のLisztソナタは2003年の浜コン(KobrinとBlechaczが最高位だったとき)で聴いていて、そのときは特に気に入るというほどではなかったので買ってはいません。

Bachの方ではフランス組曲が気に入りました。ゆったりとしたテンポ、歴史奏法を意識したアゴーギクや装飾音の入れ方など、私の好きなRübsam盤を思い出させます(さすがにRübsamほど「濃く」ないですが)。タッチも繊細かつ洗練されていて安定感があります。(そこが逆にサラっとして物足りなく感じないでもないですが。)終曲はかなり遅いテンポなんですが(通常2〜3分台で弾かれるところを5:03!)、こういうのもアリかなという感じ。パルティータ4番の方も悪くないのですが、フランス組曲と違ってこちらは他のピアノ盤を多く聴いているのでそれに比べるとそれほどのインパクトはないかもしれません。ただやはり終曲などでの軽やかな指回りというかタッチの安定性は印象的です。

一方のBoulezはいずれも初めて聴く曲。12のノタシオンはごく短い曲(0:19〜1:53)の集まりで、基本的にはよくわからん系の音楽なんですが、ちょっと面白いかなと思ってもすぐに終わってしまうので全体的に印象に残りにくいといった感じです。逆に苦痛な曲を延々と聴かされることもないですが。アンシーズはそれに比べると3:29とある程度の長さで、曲の方も反復音をモチーフのように使っていて(Scriabinの第9ソナタを思い出します)、もちろん曲調はかなり現代的なんですが、ビートも感じられてどこかトッカータ風。思ったより楽しめる曲でした。