Oleg MarshevのLisztピアノソナタほか

Oleg Marshev

danacordの看板テクニシャン・ピアニスト、Oleg Marshev(オレグ・マルシェフ)のLisztアルバム。曲はソナタのほかに交響詩タッソーのピアノ独奏版(Tausig編)とファウスト交響曲の第2楽章(グレートヒェン)のLiszt自身の編曲によるピアノ独奏版。実はだいぶ前に(他のCDの抱き合わせとして)注文したものですが、なかなか入荷せず最近になってやっと届きました。

まずLisztのソナタは、そんなに悪いわけではないけど、特筆すべきところもあまりないかなというところ。前回のKuznetsovの演奏が、各音やフレーズに対する思い入れというか読みの深さが感じられたのに対し、こちらは全体的にやや踏み込みが浅い感じ。その分瞠目するようなテクニックのキレとかがあるとよいのですが、(安定感はあるけど)さほどでもない感じで、そこまでしてこの曲を録音する意味があったのかなというのが正直なところ。個人的には、これだけロ短調ソナタを弾く人が多いと、その1/10でもスケルツォとマーチを弾いてくれたらな、と思います。

一方タッソーは彼のテクニシャンぶりが発揮されていてなかなかのもの。ソナタでは弱点(?)となっていた素っ気無さがこのような忠実系の編曲物では逆によい方向に働いて、1音1音に拘るあまりに妙なアゴーギクになる、というようなことがなく、難所でも慌てず騒がずインテンポで弾き進めていく様子は気持ちよいものがあります。特に終盤の、聴いているだけで腕が硬直してきそうな和音連打も全く安定しているのはさすが。(もちろん緩徐的な部分ではもっと歌心が感じられたらな、というのはありますが。)もっともタッソーはそれほど聴き慣れた曲でもなく、個人的にはどうせTausig編の交響詩を弾くなら前奏曲を弾いて欲しかったというのが本音ですが。最後のグレートヒェンは2台ピアノ版は何度か聴いたことがあるのですが独奏版は初めて。実はこの楽章も長さの割りにちょっと単調な気がして、できれば第1楽章(ファウスト)か終楽章(メフィストフェレス)を弾いてくれたらなと思うのですが、でもそちらは独奏版がないようなので仕方ありません(2台版を多重録音で弾いてくれてもよいですが:-)。