2台ピアノ版Brahmsピアノ協奏曲第1番

Silke-Thora Matthies, Christian Koeh

Brahmsのピアノ協奏曲第1番がもともと2台ピアノのためのソナタとして作曲されたというのは割と有名な話ですが、その版による演奏を聴いたことがないな、ということで(店頭で見かけて)買ってみたCD。演奏はSilke-Thora Matthies(ジルケ=トーラ・マティース)とChristian Koehn(クリスティアンケーン)で、これまでにもBrahmsの4手ピアノ向けの作品を、(念入りなことにこの曲の連弾版も含めて)これでもかというくらい録音しているようです。

印象ですが、Brahmsがこの曲を最終的に協奏曲にしたのは正解だったかなという感じ。もちろん協奏曲版のイメージが強すぎてまだ2台ピアノ版独特の魅力に気が付いていない面もあると思いますが。音色のカラフルさがオケに比べて落ちるのは仕方ないとして、特に第1楽章でメトロノームを傍らに置いて演奏しているのかな、と思うくらいテンポというかアゴーギクが静的で、この曲の持つダイナミズムというか動的な面が余り出ていないのが少々残念です。実に淡々と演奏しているというか…。ただ終楽章は別で、この楽章だけはリズムにも躍動感があり、またピアノ同士の掛け合いがあったりフガートがあったりと2台ピアノ版としての面白さが出ているように思います。ちょうど連弾版のハンガリー舞曲のような趣とでも言いましょうか。その意味で日本語版のCD帯の宣伝文にある「…ブラームスの全作品の中で屈指のものの一つだけに、全く違和感なしに聴くことができるというわけにはいきませんが…」「…ピアノの弱点である保持音を奏し難いという問題がほとんど生じない第3楽章など、ブリリアントで演奏効果にも優れたものといえましょう。」という評はなかなかよいところを突いているように思います。