Duo Egri & PertisによるLisztの2台ピアノのためのオペラ編曲集

Duo Egri & Pertis

これも前回と同じくHungarotonのセールで買ったもので、Lisztの2台ピアノと4手連弾のためのオペラ編曲集。(一口に編曲といっても原題ではfantasy, reminiscence, transcriptionなどいろいろあるのはいつもの通り。)曲はドン・ジョヴァンニの回想、ノルマの回想、ヘクサメロン、「夢遊病の女」幻想曲など全10曲(2枚組)。一応これでLisztの2台ピアノ&4手連弾版のオペラ編曲全集になるとのこと。演奏はDuo Egri & Pertis(デュオ・エグリ・ペルティシュ)。'98年リリース。

この中で一番興味があったのはノルマの回想で、実は2台ピアノ版は初めて聴くのですが(というか今回のCDはほとんどがそう)、正直これは肩透かしでした。と言っても演奏ではなく曲(編曲)の問題で、まず1台版に比べるとあちこちかなり簡略化されていて、一番目立つところでは中間部の緩徐的な2つのアリアに基づく部分がバッサリなくなっていますし、クライマックスの「戦争だ!」の部分は肝心の3回目の繰り返しがカット。(独奏では至難となるこの部分が2台ピアノではどうスムーズに弾かれるか聴きたかったのですが…。)一体に2台ピアノ盤では、各パートが独奏版ほどのヴィルトゥオージティを必要としないながらも、2台合わさることにより1台版以上に演奏効果が上がるのを期待するのですが、このノルマに関しては1台版よりさらに各パッセージなどがショボくなっている気がして、聴く方にしたら2台にしたメリットがほとんど感じられません。

ただそれ以外の曲は予想以上によくて、たとえばドン・ジョヴァンニはノルマと違って2台ピアノのメリットが感じられる編曲で、独奏版ではなかったようなフレーズも少し挟まっていたりして、独奏版とは違った魅力があります。(ちなみにこの曲は昔Labeque姉妹盤を買ってましたがあまり聴いておらず、この機会に久しぶりに聴き直してみたところ、アプローチは違いますがLabeque盤も結構面白い演奏でした。)特に気に入ったのがヘクサメロンで、これは独奏版より変奏が少なくて簡潔になっているのですが、華麗な技巧はそのままで、より引き締まってまとまりがある曲に仕上がっている気がします。(これは私が独奏版をそれほど好きでないせいもあると思いますが。)

ちなみに演奏はいずれも満足がいくもので、何でもこのCDは'98年の'International Liszt Record Grand Prix'に選ばれているそうですが、それもわかる気がします(と言ってもどういう素性の賞なのかよく知りませんが(笑))。