Gyorgy OraveczのSchubert/Lisztさすらい人幻想曲ほか

Gyorgy Oravecz

先日渋谷の某CDショップへ行ったらHungarotonのLiszt物のセール(というほどでもないですが、普段は見かけないCDも並んでいた)をやっていて、フルプライスだったら二の足を踏むような盤でもこの値段なら、ということで2、3買ってみました。これがそのうちの一枚で、'Schubert in Liszt's Vison'(Lisztの目から見たSchubert)と題してLiszt編曲のさすらい人幻想曲ハンガリー風メロディ、3つの性格的な大行進曲を収録したもの。演奏はGyorgy Oravecz(ジェルジ・オラヴェチュ)で2003年のリリース。

個人的な興味の中心ははさすらい人幻想曲で、Lisztによるさすらい人幻想曲の編曲というと管弦楽伴奏(協奏曲)版が有名ですが(あと2台ピアノ版があるそうですが私は未聴)、ここで弾いているのは通常の1台ピアノ版で、なんでも出版社の依頼でLisztがSchubertピアノ曲を校訂する際に、技術的な困難さを軽減しつつも演奏効果を高めるように改変を加えた版とのこと。強弱記号やアーティキュレーション、ペダルの指示などに加えて、Lisztによる改変がossiaとして入っているそうです(ただし第4部はossiaではなく完全に別版としているらしい)。ちなみに世界初録音だそうで。

聴いてみましたが、これはなかなか面白いです。まず気が付くのはテンポがかなり速めなこと。たとえばPollini盤が6:26/6:37/4:49/3:46なのに対してこちらは5:20/6:17/4:04/3:06。これがLisztの指示によるものかはわかりませんが、これだけのテンポでも破綻無く、というかむしろ爽快に弾き切っているのはあるいはLisztによる「困難さ軽減」のおかげかもしれません。(さすがはGouldから「最小努力で最大効果」として挙げられた作曲家3人の中に入っているだけはあります*1(笑)。)改変部分については、やはりオリジナルを聴き慣れているので違和感のある部分があったり、また技術的に簡単にしたために物足りない部分はありますが、第3部(スケルツォ)や第4部(フーガ)は名技的なパッセージにLisztらしさ(おバカっぽさ?)が結構現れていて、純なSchubertファンは顔をしかめるでしょうが、個人的には「そうきましたか〜」と微笑ましく思ってしまいます(笑)。Liszt好きなら買っておいて損はないかも。

*1:ちなみに他の2人はScarlattiとProkofiev。