Cyprien Katsarisのロシアン・アルバム

Cyprien Katsaris

前回に続いて'70年代の(一部)ライヴもので、Cyprien Katsaris(シプリアン・カツァリス)のRachmaninovの3番とTchaikovskyの協奏曲をメインにしたロシアものを集めた2枚組CDの感想を。正直Katsarisはそれほど好きなタイプのピアニストではない(Chopinのバラード&スケルツォ集は面白くてよく聴きましたが)ので迷ったのですが、'70年代のバリバリの頃にどんなRachmaninovを弾いていたのかちょっと興味があったので買ってみました。ほかにRachmaninov前奏曲3曲、Prokofievの7番ソナタの終楽章、トッカータ、Shchedrinのユモレスク、ScriabinのOp.8-9、Cziffra編の熊蜂の飛行などを収録。Rachmaninov以外はライヴ録音です。

で、Rachmaninovの3番ですが、スタジオ録音にしてはかなり白熱した演奏で、何度もテイクを重ねてじっくりと磨き上げたというよりは、一発録りに近い形なのかもしれません。第2楽章の後半や終楽章などは彼らしい指回りの良さが発揮されている(終楽章の開始テンポは最速の部類でしょう)のですが、個人プレイに走った(?)テンポの揺らし(加速)のためオケとずれてしまったり(意図的かも)、やや勢い任せに感じられる音の運びもあって、個人的には(楽しめはするけど)「面白うてやがて…」というところでしょうか。また音質が今一つなせいもあると思いますが、もう少しズシリと深々とした重みのある音や雄大なスケール感があればな、という感じです。前奏曲の方も、特にOp.23-5など知らずに聴いたら、ライヴ録音?と思うほどの熱のこもり方。2枚目のライヴの方は当然のことながらさらに熱い演奏で、少々やり過ぎというか品がなさも感じられて、このあたりCziffraやSultanovなどを思い出させ、彼らの演奏を好むような人はKatsarisも好きなのかな、と思いつつも、個人的にはちょっと…という感じです。特にProkofievの7番の終楽章はArgerich(やはりアンコールで終楽章だけ弾いてますね)以上の爆演で、最後の部分など思わず苦笑してしまいました。

なお、ProkofievのトッカータやCziffra編の熊蜂などは以前TELDECから出ていたアンコール集に入っていたものと同一音源のようです。