Garrick Ohlssonの’73年プラハ・ライヴ

Garrick Ohlsson

Pollini以降のChopinコンクール優勝者の中では日本で最も人気がないと思われる(笑) Garrick Ohlsson(ギャリック・オールソン)ですが、私は割と好きで、今回も新たに'73年のライヴ演奏がリリースされたので、最近はさすがに技巧的にも衰えを感じるのですが、当時はまだバリバリでしょうということで買ってみました。(実は注文したのはだいぶ前なのですが、抱き合わせで注文した別のCDがなかなか入荷せず、挙句のはてにメーカー在庫なしでキャンセルになって、やっと先日届きました。)曲はHaydnのソナタHob.XVI-50、Chopinのバラード第3番(ジャケットでは4番となっていますが誤り)、ポロネーズ第5番、ScriabinのエチュードOp.8-1,5,12, Op.42-3,5,8, Op.65-1,2,3、Ravelの夜のガスパール

Ohlssonの魅力というと、Chopinのポロネーズ集やDebussyエチュード集で代表されるように、その明るく楽天的な楽器の鳴らしっぷりと、そんな中でも抒情性や詩情が感じられるところかなと思うのですが、今回のCDでその長所が一番感じられるのはやはりChopinでしょうか。バラード第3番でのおおらかな歌いっぷりやポロネーズ5番での深々としたフォルテ和音、中間部での詩情溢れる歌などが印象的です。ただ割とミスタッチが多いのが少し残念。次いでScriabinも(曲によっては不満なものもありますが)悪くないです。特にOp.65-1は手が大きいだけあって(13度届くという話も聞いたことがありますが)9度の連続も余裕。ちなみにOp.8-12は通常弾かれる版ではなく別稿を使っており、聴き慣れないため最初の方は暗譜が飛んで適当に弾いているのかと思ってしまいました(笑)。Ravelは、ガラス細工のような繊細さや細部まで水も漏らさぬ緻密さが必要とされるのでOhlssonにはやや不向きかな、と思ったのですが、これも意外に悪くないです。ただ特に印象に残るというほどではないかもしれません。

というわけで、全体的にはまずまずというところでしょうか。個人的には(以前も言ったようにScriabinのエチュード集の良い盤が少ないので)ピークの時にスタジオ録音で万全のエチュード全集を録音していてくれたらな、という気がしました。