Herbert Schuchの’Nachtstücke’

[Oehms OC733]

デビュー盤を聴いて以来、大いに注目しているSchuchの3枚目のアルバム。今回は'Nachtstücke'ということで夜がテーマになっているのだが、聴いてみて一言、やはり彼は大した才能である。プログラム前半のSchumannとHolligerは正直苦手系の曲(特にHolligerはワケワカメ系の現代音楽)なのだが、それでも思わず引き込まれるようなセンスの良さ。そして真骨頂は後半のScriabinとRavelで、いずれも精巧なガラス細工を思わせるような、繊細さと鋭さ、そして完成度の高さ。しかも単なる模範的演奏に留まらずに、細部に彼独特の解釈というかこだわりを覗かせているところが憎い。ちょっと気が早いが、今年の印象に残る10枚に入るのは間違いないだろう。将来はAndsnesやLuganskyのように、世代を代表する正統派ピアニストになっていくに違いない。